お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
いつもの憎まれ口の叩き合いとは違う、少し気まずい雰囲気に内心動揺していると…
「ハァ……悪かった」
桜賀が、ため息の後にポツと呟いた。
え?
意味が分からず顔を桜賀に向けると、桜賀もまた私を見た。
そして、その笑みのない表情にドキリとすると…
「そう思わせてたなら、すまなかった」
と、まっすぐに目を見て言われた。
「えっ、あ…うん…」
初めて見る、その桜賀の表情と雰囲気に、いつものテンポのいい返しもできなくて…
というか、何て言ったらいいのかわからなくて口をつぐんだ。
すると、桜賀がグラスを少し振ってカラカラと氷を鳴らすと一口ゴクリと飲み、それから徐に口を開いた。
「奈都子のことは、ちゃんと女だって思ってる」
「!…うっ…うん…」
このタイミングで名前を呼ばれるとすごくドキドキするんですけど。
「この前の焼肉の時も、女のオマエを守ってやらないと、って思って行動してた。けど…所々、言い方は悪かったと思ってる。…ごめん」
しかもいきなり謝られてしまい、その意外すぎる展開に動揺し、ワタワタと慌てて両手を振った。
「うっ、ううん!全然だから!……あっ、あの、そこまで考えてくれててありがとう!…てっきり子供扱いされてるとばかり…」
「いや、そう思わせてたのも俺のせい。それに…キツいこと言って駅のホームで泣かせちまったし」
駅のホームで…? …あっ!
「あれは違うの!言われたことじゃなくて……桜賀が心配して一生懸命探してくれてたのに、呑気に後で連絡すればいいと思ってた自分が情けないのと……桜賀に申し訳なくて……」
「それで泣いてたのか」
「…うん…私はダメだなぁって思って…」
「そっか…」
…今なら素直に言葉に出せそう…
「あの、私の方こそ…桜賀の優しさに気づけなくてごめんなさい…。それと、たくさん助けてくれて……あと…お…女扱いしてくれて…ありがとう」
最後はちょっと照れてしまったけど、ちゃんと謝れたし、お礼も言えたことにホッとした。