お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

呆れ、落胆、失望…
そんな言葉が頭を巡っていると、店の奥から曽我課長が「鈴原チャ~ン?どうかしたのぉ?」と気持ち悪い甘い声を出しながらやって来た。

「何かあったぁ?……あぁ?宝花、お前何やってんの?ワインを体で飲む気かぁ?ったくこれだから盗賊は貪欲だよなぁ」

胸元に広がる赤ワインにタオルハンカチを押し当てる私に、課長はそんな言葉を投げ掛けた。

すると、ルナさんが私を庇うように前に出て言う。

「違うんです、課長。紗莉の不注意で奈都子ちゃんにかけてしまって…」

「鈴原チャンは優しいなぁ。でもな、そんなのこいつが勝手にぶつかったんだよ、なんたって〝ボケナス〞だからな、ボケっとしてたんだろ。桜賀も上手いあだ名つけてくれるよなぁ、ハハハ」

「課長、そんなこと言わないで下さい。…奈都子ちゃん、ごめんね、これクリーニング代。足りなかったら言ってね」

「いえ…結構です」

「そうだぞ鈴原チャン、クリーニング代なんて盗賊にやる必要ないぞ。なぁ、ボケナス、いらないよなぁ?」

課長の言い草はいつものことだけど、ボケナス呼ばわりはカチンときた。
桜賀に言われるのとは全く違う。
それは葵も同じだったみたい。

「…課長は黙っててくれませんかね」
課長を睨みながら言う。

「まったく、楢橋もいつまでコイツの味方してんだ?お前も同族に扱われてんだぞ?」

「えぇ、あたしは課長達みたく盗賊の一味にはなりたくありませんからね」

「ハァ…まだそんなこと言ってるのか?お前も強情だなぁ」

「いつか分かりますよ、どっちが本当の盗賊か。ねぇ、ルナさん?」

「そんな…楢橋さん……でもそうよね、楢橋さんは奈都子ちゃんのお友達だもんね、奈都子ちゃんの味方でいてあげてね」

「そうやって余裕かましていられるのも今のうちですよ。こっちは本家本元ですし、証拠は出そうと思えばわんさかあるんですからね」

「っ!お前、鈴原チャンに向かって…!」

課長が拳を振り上げながら大声をあげると、葵が冷静に「パワハラ」と一言放った。

その言葉に反応するとすぐに拳は下ろしたが、葵を睨み付けたままだ。


…ここまでされて、私のみならず葵までこの言われよう…

ここで働くのはもう無理だ…

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