お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~
時間が早かったせいか、会場にはまだ矢野さんしか来ていないようだった。
「矢野さん、こんな格好ですみません。ちょっとこちらに居られなくなったので、ご挨拶だけになりますが…」
申し訳なく思いながらそう言うと、矢野さんは葵と私の後方をチラと見てから声を抑えて話してくれた。
「奈都子ちゃん、私はあのキャラクターが奈都子ちゃんの作品だって信じてるよ」
「!…矢野さん…」
「前にうちの子を会社に連れて来た時に、奈都子ちゃんが一緒に絵を描いてくれたの、覚えてる?もう2年くらい前だけど」
「あ……はい。ミチルちゃんが持ってた小さいノートに一緒に描かせてもらいましたよね。アニメや何かのキャラクターとか」
「うん。私、最近になってそれを思い出して見てみたのよ、そのノート。そしたらそこに〝まもるん〞もいたの」
「えっ」
「最初から〝まもるん〞は奈都子ちゃんの作品だろうなとは思ってたけど、これで証拠はできたし確信したわ。…それにあの時だって、何の準備もなくいきなり娘に『何か描いて』って言われたのに、あんなにたくさんササッと描けるんだもの。描き慣れてるってことは、きっと前から描いてたんだろうな、って自然と感じたわ」
「そうだったんですね……ありがとうございます。信じてもらえて…嬉しいです…」
「ナツコ、良かったね!何でも描き残してみるもんだね!アハハ!」
涙が溢れる私に、葵が涙目で言うものだから、更に涙腺が緩んでしまった。