お守りに溺愛を込めて~初恋は可愛い命の恩人~

お昼休みにそんな事を話していたら、その日の午後に、なんと桜賀が一人で多摩支店にやって来た。

ちょうど曽我課長の嫌がらせの一つである〝オフィスビルのエントランスの掃除〞をしていたら桜賀が入ってきたからびっくりしちゃった。

「よっ、お疲れ。…ってか、ここで何やってんだ?」

「…課長からの命令で掃除をね」

「はぁ!? そんなことまでやらされてんのか!?」

「ん…まぁ……でも玄関をきれいにしておくのは大事だしね、会社の顔だし。…それで桜賀、今日はどうしたの?」

「あぁ、俺は支店長に用事があってさ」

「そうなんだ。…忙しそうだね」

「まぁそれなりにな。あぁ、後で連絡する」

「…うん。お疲れ様」


エレベーターの階数表示を見ると、桜賀はオフィスには顔を出さずにすぐに4階に上がったみたいだった。


…久しぶりに見た桜賀は少し疲れてる様に見えた。

本社でのお仕事は大変なのかな…
それとも、支店長と話すだなんて、営業じゃないお仕事になったとか?
忙しいのなら体調とか大丈夫かな…


あれだけ〝桜賀は私から離れようとしている〞と思い込んでたのに、前と変わらない桜賀の話し方と、最後の「後で連絡する」の言葉を思い出すと、胸がきゅうっと甘く疼いた。



それから一通りの掃除を終え、少しだけ心が暖かくなりながら3階のオフィスへ戻る途中、ルナさんと保科さん、田巻さんが4階に上がっていくのが見えた。


…桜賀の出待ちでもするのかな。

なんて考えながら、私はそのままオフィスへと戻った。

< 87 / 267 >

この作品をシェア

pagetop