君と始める最後の恋
「バカ、本当バカ。頑固。」

「なっ、何でそんな貶してきて!?」


 先輩は少し溜息を吐いて、今度は私の肩を掴んで、少し屈んで目を合わせる。

 いつもの何を考えているかわからない冷めた瞳ではなくて、心配しているような、先輩も不安に感じているような、そういった様子だった。


「何でも1人で片付けようとしないで。困ったら2人で悩めばいいじゃん。君だけの問題じゃないんだから。」

「でも…。」

「でもじゃなくて、俺がそうしたいだけ。1人にしないから、ちゃんと相談してよ。」


 先輩の優しさが今はすごく沁みる。こういう優しい人だって分かってたけど、何となく言えなかった。やましい気持ちは一切なくても、それでも恋人が告白されたとか普通聞きたくないでしょ。

 だけど先輩は1人でどうにかしようとしてた私を1人にしないって言ってくれた。そんな気持ちが嬉しくて思わず泣いてしまいそうになる。


「うう…、先輩大好きすぎる…。」

「はいはいって、泣くな!これから沙羅たちに会うのに変な誤解される!」


 そう言いながら雑に溢れる涙を拭われた。

 この人を好きになってよかったって思わせてくれる。片思いの時からずっと。
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