君と始める最後の恋
────Side 郁


 沙羅さんの家の帰り道夜道を一緒に先輩と歩く。

 このまま多分家に帰るんだよね。週末だし一緒に居たいなんて思ったり。するけれどまだ恋人としての関係性が薄いだけあって中々まだ我儘が言えない。

 手を繋ぎたいとかくらいなら…?

 横にいる先輩を見ると、先輩は真っ直ぐ前を見ている。横顔が相変わらず格好良くて、横顔を見るだけでときめいてしまった。


「視線うるさいんだけど。」

「へ?うるさいとかそんな…。」

「本当、何。言いたい事あんなら言いなよ。」


 そう言うと、私の言葉を待つ。

 このまま一緒に居たいって言ったら一緒に居てくれるんですか?どうやったら当たり前に一緒にいる事が出来る?

 そう考えるけれど、今は面倒な女だと思われたくなくて、すべての言葉を噤んだ。


「…いえ、なんでもないんです。」

「…本当、君に我儘言わせられないのは俺だから?何で君変な所で我慢するの。」


 そう呟いて眉間に皺を寄せると、私の手を自然に取る。
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