君と始める最後の恋
 大丈夫?と周りの先輩から水を渡されて有難く受け取る。


「いい子居なかったとか?」

「まあ、そうかも。その高校の時の彼女以上に好きになれる子に出会えなくて、みたいな?好きだったんすよね。」

「えー、小鳥遊くんみたいな顔のいい子でも振られるとかあるんだ。」

「振られましたよ~、遠距離は耐えられないって。結構ショックだったな。」


 あまりの居心地の悪さにスマホで類くんに連絡する。

 これ、長居しちゃ駄目なやつだ、と片手でこっそり、もうすぐ帰りますと送って、グラスに残っているお酒を急いで飲み干す。空になったグラスをドンっと置いてスマートフォンを握りしめた。


「まだ好きなの?」

「多分その子以上に好きになれる子が出るまでは好きでしょうね。」


 一番聞きたくなかった言葉を最悪の形で聞いてしまった。

 今も好きだと言われたわけでは無い。だけれど、今の発言で今はまだ私が一番好きだったと遠回しに告白された様な気持ちで、それが凄く嫌だった。結絃は、私が先輩と付き合っていると知っているのに、こんな大勢の場で私が何も反論できない形で伝えてきたのだ。

 それに、遠距離になったのは全て結絃の都合で、それで別れて連絡1つしてこなかったのに、まだ好きだなんて、簡単に言わないでほしかった。

 そんなやりきれない気持ちと怒りを必死に抑えていると、スマホから1つ通知音でメッセージが届いたことを知らせる。画面を見ると類くんから返信が来ていて«着いた»と見て、勢いよく鞄を掴んだ。


「すみません!今日は先帰ります!」

「え、もう?明日休みなのに。」

「一ノ瀬先輩にもうお迎え来てとお願いしてしまったので!今日はありがとうございました!今後もよろしくお願いします!」


 そう言って一礼して足早に会場を出る事にした。

 この場を早く離れて、今は一刻も早く結絃から離れたい。
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