君と始める最後の恋
「…こんなことなら大学、離れなきゃよかったって、後悔してる。」

「そんな話してももう今更でしょ。」


 大学時代恋愛に前向きになれなかったのは、結絃との事をしばらく引き摺ったのもあったけれど、他人に振り回される事に疲れてしまった私は、無意識に恋愛を避けていた。

 元々実家を離れたい欲もあって、それでも遠方に行けば、結絃と遠距離になってしまうかもと思えばそれは嫌だった。

 そう思いながら私はこんなに悩んでいたのに、結絃は同じ気持ちでいてくれないのかなんて勝手にがっかりもしてしまった。相手にも無意識に見返りを求める様になってしまったそんな自分も面倒で、尚更恋愛なんてと、否定的になった大学時代。

 もう今みたいに恋なんて出来ないかもしれないと、諦めていた。


「…何言われても無理だよ。もう、私には類くんしか居ないから。」


 そう言い放って店を出ようとすると、いつからか類くんがそこに居た。聞かれていたとは思わなくて心臓が嫌な音を立てている。

 それと同時に冷や汗も出てきて、どこから聞いていたのかと焦る。

 私の顔をみるなり類くんは私の腕を引いて胸元まで抱き寄せる。


「今更後悔してもあげられないよ。この子だけは。」

「…そう言われても諦めないかもですよ。」

「俺がこの子を離す気も無いし、この子の気持ちも離す気無いから。」


 類くんの落ち着いた声に胸が締め付けられる。

 こんな風に話さないってはっきり言ってくれる先輩が好きで仕方ない。もしかしてこれが独占欲?初めてはっきりと感じられてすごく安心した。

 私もこの居場所から離れたくない、離してほしくない。


「好きなのはご勝手に。奪えるもんなら奪ってみれば。」


 それだけ言うと私に「帰るよ」と呟いて、腕を引いて店を出た。
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