君と始める最後の恋
 しばらく歩くと、店から少し離れた位置でようやく足並みを揃えてくれた。


「類くん、ごめんなさい。あんな話聞かせるつもりじゃ…。」


 私が謝罪したタイミングで足が止まる。


「何の謝罪?何で謝ってんの。」


 その問い掛けに口を噤んでいると、類くんは軽く息を零した。


「まじで怒ってない。それに君ははっきり伝えたじゃん。偉かったよ。」


 そう言って私の頭を優しく撫でてくれる。ずっと不安だった気持ちが少し報われた気がする。何でこんなに優しいんだろう、この人。普段は驚く程冷たい時すらあるのに。


「類くん、優しすぎです。何でそんなに優しくしてくれるんですか。」

「…何もわかってなくて甘え下手のバカには教えない。」

「なんですか、それ!」


 それだけ言うと類くんは先に家の方に足を向けた。

 類くんの気持ちを全部知るのは、私にはまだまだ難しいみたいだ。
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