君と始める最後の恋
 家事は完全に役割を決めての分担はしていない。

 出来る方が出来ることをするスタイルの我が家。料理は私のが得意なので、一緒に帰ってきた時は料理は私がして、その間に類くんは乾いた洗濯物を畳む。

 類くんの方が几帳面で洗濯物は決まった畳み方で、綺麗に仕舞わないと気が済まない。こだわりが強いので収納系は類くんにお任せしてたりする。

 私が料理している間に類くんは、お風呂掃除まで済ませてお湯まで張っといてくれたりする。

 最近少しずつ類くんの仕事が忙しくなってきているようで、残業して帰ってくる日もある。色々やってもらえるの有難いけど、仕事で疲れているだろうに少し心配になる。

 そんなことを考えながら、類くんをキッチンから眺めていると洗濯物をしまい終えた類くんと目が合う。


「何。手伝いいる?」

「いえ、たまにはゆっくりしてくれてもいいのになと思いまして。」

「そんなわけにはいかないでしょ。君が頑張って料理してくれてるのに。共働きなんだし、2人で早く済ませてゆっくりした方がいい。」


 言い方はぶっきらぼうだけど私の事も労わってくれているのが伝わってきて嬉しい。


「類くん、優しい…。好きです。」

「馬鹿じゃないの。IH用意しとくよ。」


 相変わらず好きだよなんて甘い言葉は返ってこないけれど、その呆れた様に言う「馬鹿じゃないの」に素直じゃない類くんの気持ちが隠れているような気がするのだ。

 …ただの気のせいと言われれば何も言えないけど。
< 283 / 426 >

この作品をシェア

pagetop