君と始める最後の恋
「結婚式、1人で開く物じゃないですけど。」

「分かってるよ。でも、郁が大勢の中でやりたいっていうならその通りにしてあげたいと思うし、出来るだけ結婚式は郁の理想に寄りたい。」


 言っている事は優しく感じるけど、今類くんが忙しいから投げたいだけじゃないの?と捻くれた考えがどうしても出てきてしまう。

 話し合いが最近足りていないのもあって、完全にコミュニケーション不足だ。

 分かってはいるけど、どんどん類くんと話したくなくなっていく。


「…類くん、本当は開きたくないんじゃないですか?結婚式。」

「何でそうなんの。そんなことない。」


 そう言いながらもこの会話が類くんからしたらこの会話が面倒なのか、うんざりしたような顔をしている。

 本当、類くんは意外と分かりやすい。

 入社した時から、面倒と思っている時の顔とかすぐに出る人だった。

 私だって、好きでこんなにうるさく言っている訳じゃないですけど。

 類くんも忙しいのは分かっているのであまり強くは言えない。

 ここで喧嘩しても仕方ないし、大体の事は飲み込めば平和的に収まると知っているから何も言わず飲み込んでしまう。


「…そっか。今日は類くん忙しそうですし、話し合い後日にしますね。」


 そう言って1人になりたくて寝室に行こうと立ち上がるとその腕を掴まれる。

 類くんの方を見ると、真剣な表情でこちらを見る。


「…忙しくない。」

「休日に仕事するくらい立て込んでるのに?」

「良いから。大丈夫だから、ここに居て。」


 そう言って腕を引き寄せるともう一度隣に座らせられる。

 こういう1人にしてほしい時、絶対1人にしてくれない。

 沙羅さんと充さんが結婚式前喧嘩した時もこんな感じだったのかな。

 私達も交際前だったけど、その日喧嘩して、1人にしてほしい私をその時も類くんは手を離そうとしなかった。


「(意外と頑固。)」


 私が逃げない様にかノートパソコンをテーブルの上に置くと、私の両手を掴む。
< 300 / 426 >

この作品をシェア

pagetop