君と始める最後の恋
「結婚式は、郁だけの物とは思っていないし、負担掛けたいわけじゃないけど、俺よりもきっと郁の方がこだわりが強いと思うし、それに郁が納得のいく結婚式になれば俺はそっちの方が良いから。」


 先程も聞いた言葉を再度私の目を見ながら伝えてくる。

 そういう人だと分かっていても少し不安になった。


「…類くん、私本当に結婚式を無理に開く必要はないと思ってて、写真撮るだけとかでも良いです。そう言うの類くんが好きじゃないのも理解してますし。」

「無理とか言ってないでしょ。写真も撮るし、結婚式もするじゃダメなの。」

「へ?」


 そんな時間どこにあるんだと聞きたくなる程の提案に驚いていると、類くんが少しだけ笑って私の頬に触れてくる。

 その時の表情が凄く優しくて、目が離せなくなる。


「郁の綺麗な姿を見られる回数が多いと俺が嬉しいから、そうしたいんだけど。」


 いつも言葉が足りないから誤解受けやすいけど、私が少し弱りだすとこんな風に言ってくるのずるい。

 今初めてそうしたいって伝えてくれた事に安心する。

 ずっと結婚式の事考えていてくれる様子が無い事に、少し焦っていたから。

 ようやく類くんのこうしたいの言葉が聞けた事が嬉しかった。


「…ずるい。」

「ずるくないでしょ。」


 そう言って少しだけ笑うと、額に軽く口付けをしてくれる。

 結婚してから私の扱いが分かってきている類くん。

 さっきまであんなに今は一緒に居たくないって思っていたのに、今度は離れ難くなる。

 きっとどんだけ怒っていても、嫌になっても、ずるいこの人を好きな事だけはやめられないんだと思う。
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