君と始める最後の恋
「…今日も帰り遅くなるから、少しでも補給。疲れ、癒してもらおうと思って。」


 そう言いながら私の肩に頭を乗せる類くんに思わずきゅんとしてしまった。


「(甘えているの滅茶苦茶可愛いのですが…っ!)」


 悶えを何とか抑えて、黙って肩を差し出す。

 髪がふわふわさらさらで、相変わらずいい香りがする。

 私のしてた嫉妬が全て吹き飛ぶくらいの行動に全てどうでも良くなる。

 会社でこんな事するの嫌がるはずの類くんがこうしてくるって事はきっと相当疲れているんだと思う。


「今日も、ご飯作って待ってますね。」


 そう言って笑い掛けると、類くんがふと顔をこちらに向けて目が合う。

 至近距離で視線が交わり合うと、そのまま軽くだけど唇を奪われた。

 会社でのまさかの行為に驚かされるばかりで、声も出なくなる。


「…頑張って早く帰るから。寝落ちしないで待ってて。」

「え…、え?」

「じゃ、俺は作業して行くから。お疲れ様、桜庭さん。」


 仕事モードに切り替えてしまう類くんに何も言えなくなる。

 いつも起きて待ってるけど、私はやる事済ませたら先に寝てしまうから、だから起きてて待ってて…って事は…。

 想像して顔を赤くしていると類くんがこちらを見る。


「何してんの、早く行きなよ。」


 そう平然と言い放つ。

 私はそんな不確定な情報でこんなに意識してしまっているのに、この人は本当にどこまでもずるい人!


「このツンデレー!そんな所も大好きですけど!それではお先失礼します!」


 そう言って資料室を出て行く私。




「…本当バカ。」




 そう呟いている類くんの声を私は聞いていなかった。
< 311 / 426 >

この作品をシェア

pagetop