君と始める最後の恋
「ムカつく。」

「え?」

「何なの、最近の君。いつからそんなお利口で迷惑掛けない人間になったの。一人で何でも出来るってそんな子だった?」


 類くんの言葉に何も返せなくなる。

 今の類くんは明らかに怒っていて、私から離れて体を起こすとベッドの背凭れに背を預けてふいと私から顔を背ける。


「何もわかってない。君以外に優先したい事なんて無いからって言ったよね。
こんだけ聞いても近付いても距離取られて、何がしたいの本当に。」

「私はただ、話してもうまく纏まらないし言って類くんの負担になりたくなかったんです!今お仕事も忙しいですし、話す時じゃないと言うか。」

「誰が負担とかそんな事言った?俺のせいにして向き合う事から逃げただけでしょ。」


 こんな夜更けにお互いの我慢が限界を迎えて火種を散らす。

 そこから燃え上がる様にして口喧嘩が激烈していた。普段はこんな風に口喧嘩する事なんて無い。

 類くんが重い溜息を零すと「それに君が我慢して上手くいくなんてある訳無いでしょ。」と低い声で呟いていた。

 今まで実際上手くいってたんだよ。
 周りの目を気にして、人に合わせていたら喧嘩せずに済んだし、誰も傷付かなかった。


「どうしてわかってくれないんですか。普段何の話も出来ないくらい忙しいの類くんで、そこに負担を掛けたくないって思うのがそんなに悪い事ですか。」

「そもそも、夫婦って1人で頑張って成り立つもんなの?君が我慢して、俺に負担がかからなかったとして俺がそれで嬉しいって本気で思ってんの?」


 そんなの分かるわけが無い。

 私が何も返事しないのを見ると、軽く溜息を零してベッドから立ち上がった。


「今日は頭冷やすから。後日、ちゃんとまとめて話して。」


 そう言って寝室のドアの元まで行ってこちらに少し振り返る。


「これで逃がす気ないから。君が話すまで長期戦になろうが執拗くいくつもり。」

「類くん…。」

「ムカつくんだよ、君が俺を避けるのも、一番君の事理解してるって思ってたのに、何も分からないのも。逃げるなら逃げてもいいけど、どこまでも追っかけて捕まえるつもり。早めに決着付けたかったら今回は君が折れるしかないから。」


 それだけ言い放つと、寝室を出て行く。

 どうせ嫉妬してたとか本当の事全部曝け出したら困るでしょ。

 類くんに言われた言葉が全く離れてくれなくて、それから眠れなかった。
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