君と始める最後の恋
 私も、嫉妬してたって今なら言えるんじゃないかってそう思って口を開こうとした時、類くんの会社用のスマホが音を鳴らした。

 類くんがポケットからスマホを取り出すと「お世話になっております、一ノ瀬です。」と電話に出ていた。

 また、タイミング逃した…。
 最近の私達はこういうのが多すぎて、いつも言いたい事を言えずに終わってしまったり、言えなくなってしまったりする。


「何、取り込み中なんだけど。」


 その話し方で上原さんだと感覚的に気付いてしまった。
 こういう所で気付く自分にもタイミングの悪さにも嫌気がさしてくる。

 いつもみたいに鈍い私でいればいいのに、こういう時無駄に察しが良い。

 気付いてほしいことに気付かないで、気付かなくていいことにきづかないのだ。


「FAXでいい?郵送?」


 そんな業務的な会話をしながら、胸元に差し込んでいた手帳に軽くメモを取っている。

 私は食べ終わって、飲み物だけもらって戻ろうとしたらその腕は片手で掴まれてしまった。

 それから目でどこ行くのと言いたげにこっちを見ていて、逃げることに失敗した。

 捕まってしまえば離してもらえないから大人しく座ると、座ってからもずっと掴まれていた。


「そう、了解。じゃあ、また。」


 そう言いながら、電話を少し間を開けて切ると「何逃げようとしてんの」と少しムスッとした表情をしていてそれが何だか可愛いって思えてしまった。


「お昼食べ終わったし、もういいかなって。」

「逃がさないって言ったろ。」

「逃がさないって…、今は何も話せないでしょ。」

「うるさい、近くに居て。」


 近くに居ての言い方も子供が我儘言っている様な言い方で可愛らしくてくるっしくて窒息しそうになる。

 類くんの表情は変わらず怒っているのに、どうしてこんなに近くに居ようとしてくれるのか。
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