君と始める最後の恋
 それに対して類くんの家庭は、お義母さんの負担ばかりにならない様にお義父さんも動いている。

 こういう過程で育った充さんと類くんが今の様に育った理由がよくわかる感じだった。


「…帰りたくないの?」

「わかります?」

「電話の感じとか見てたらね。俺も一緒に帰ろうか。」

「え?」


 類くんの提案に少し驚いて類くんの方を見ると、私の頭を優しく撫でてくれる。


「無理に泊まらなくても近くでホテル取っても良いし、俺も結婚挨拶しかしてないから実は心配なのかもよ、郁の事。てか俺がもっと気を配るべきだった。ごめん。」

「それは違います。類くんがきっと気を遣ってくれても、実家にはきっと帰っていないので。」


 類くんが帰ってもいいよって言われても、私はここが居心地良くてここに居たかったから、どっちみち帰らなかった。

 普通、義実家なんて帰りたくないよね。

 こんな優しい旦那さん他には居ないと確信する。


「一度帰るには帰ろうと思います。それでなんですけど…。」

「うん。」


 本当にこんな事お願いしていいのかって悩むけど、言う事にするって決めたし、類くんにも来てほしい。


「着いて、きてくれます?」

「着いてくよ。大丈夫。」


 私の不安を察してか、手を繋いで迷いも無くそう答えててくれた。

 いつも塩対応で類くんこそ素直に何も言ってくれない事が多いけど、いつも大事な時には優しく受け入れてくれる。

 そんな類くんが大好きで仕方ない。


「類くん、大好きです!」

「本当好きとかはすぐ言ってくるよね君。」

「挨拶ですから。」

「何それ。」


 私の言葉に類くんが笑ってくれるその瞬間も愛おしくて仕方ない。
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