君と始める最後の恋
「ただいま~。」


 秋のその声でリビングから、お母さんがスリッパを鳴らしてリビングから出てくる。


「おかえり…って、郁と類さんも一緒だったの?」

「たまたまそこまで来てて、中に入ってもらった。温かいお茶入れるよ。寒かったよね。」

「秋が台所に立つ必要なんて無いでしょ。お母さんがやるから。」


 こういう所。いまいち私は好きになれない。

 今時男の人でも周りはやってるよ。
 いつまでそんな古い考えで押し付けて生きていくのだろう。

 ずっと一緒に過ごしていても変わりそうな気配はない。


「何度も言ってるけど、台所に立つ必要ないとか、1人暮らし出来なくなるでしょ。子供じゃないんだし、やめなよそういうの。」


 相変わらず古い考えは今も変わっていなくて、きっと今も藍も女の子なんだからって言われて育っているのだと思う。

 お父さんは仕事にでも行っているのか居なくて、リビングに私と類くんは通された。


「今日は、泊まっていくでしょ?」

「ううん、ホテル取ったから良い所で帰る。」

「え、何で。うちに泊まればいいじゃない。お金もかからないし、そうしなさいよ。」

「今時当日キャンセル料かかるし無理だよ。」


 そう言いながら類くんに座ってもらうと台所に向かってお茶の用意をする。

 ここに帰ってくると自分で動くのがもう染みついていて、秋が台所に居るのが逆に慣れない。


「姉ちゃんも座ってていいよ。長時間移動疲れたでしょ。」

「秋がお茶入れてくれるなんて変な感じ。」

「母さんがやらせてくれないから。」


 そう言いながら笑う秋にお母さんはまだそわそわとこちらを見ている。

 この風習はお母さんの実家がそう言う家だからもあると思う。

 お父さんを台所に立たせないとか、常に笑顔で出迎えるとかそういう風に教え込まれて育っているから、今も抜けないんだろう。
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