君と始める最後の恋
「ああ、その点は郁さんにお任せしていますし、働いていても家の事も凄く頑張ってくれています。凄く支えられていて。」

「それならいいんですけど…。それと結婚式はどのように…?」

「家族だけの集まりにしようと思ってるよ。」

「え、親戚の方々は呼ばないつもりなの!?」


 お母さんの大きな声に私も類くんも秋も驚いた顔をした。

 そんなおかしな話をしたつもりはない。


「そんな…、せっかくの場なんだから大きくやればいいのに。お金が足りないなら出しましょうか?」

「やめてよお母さん。話し合って決めたことだし、お金足りないからとかじゃない。」


 類くんの前でなんて恥ずかしい話をするんだろう。

 それに、私と類くんの式で親族にお披露目をするために開くつもりはない。


「だけど、一生に一度の晴れ舞台だし…。」

「大丈夫だから。家族式にするって決めたの。」


 そう言って自分の気を落ち着かせる様に温かいお茶を口に運んだ。

 空気が重い。
 折角帰ってきてこんな話もしたくなかった。

 お母さんも頑固な私の事を知っているからか、何も言わない。

 学生の時はずっと我慢していてこうして自分の意思を通せなかった。

 大人になって、初めてこんな風に意思を通している気がする。


「…今日はお暇します。郁も体調あまりよくないみたいなので。」


 類くんの言葉に少し驚いて立ち上がる類くんの方に顔を上げる。

 体調が悪いなんて言っていない。


「え、そうだったの?」

「今日しか時間取れなさそうだったので、少しでもって。また改めてゆっくりお邪魔します。秋さん、お茶ありがとうございます。ごちそうさまでした。」


 そう言って私の手を引くと玄関先まで引っ張っていく。

 私の返事なんて聞かずして、いつもよりも類くんの強引さが少し目立っていた。
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