君と始める最後の恋
 日付を超える前の深夜、藍は予告通り最寄りの駅に来ていた。

 藍の顔はほんの少し罪悪感を感じている様な表情をしているけど、それにしても人に迷惑を掛けている事を素直に謝る様子はない。


「藍、何してんの。人に迷惑も心配も掛けて。」

「…お姉ちゃんのせいじゃん。」

「え?」

「…なんでもない。疲れたから家に連れてって。」


 この子は、本当…!怒りたい気持ちを抑えてふいと顔を逸らしている藍を睨みつけていると、類くんははあと溜息を吐く。


「置いて帰れば?」

「「え?」」


 私と藍の声が重なっても類くんは腕を組んで、藍を見ている。


「これが君の家に行った時の態度ならいいけど、人に迷惑と心配かけといて、挨拶もお願いも出来ない子供に優しくする気無いから。その辺のホテルでも泊まれば?」

「知らないの?高校生が1人でホテルに泊まれないって。親の同意とかいるんですけど。」

「そんなの俺と郁の知った所じゃないでしょ。迎えに来させといて郁にありがとうも言えないの。」


 類くんがめずらしく猫を被っていない事にも驚いたけど、初対面の藍と言い合いをしている。こういうの心底面倒臭そうな類くんが…、というか、今既に機嫌が悪い。


「な、なんなの。急に会って、そんな言い方しなくて良いでしょ。お姉ちゃん、何でこんな感じ悪い人と付き合ったの。」

「…藍、ホテル取りに行こう。私が出してあげる。」

「は?意味わかんない、泊めてくんないの。お姉ちゃんだけが頼りで来たのに。」

「一人暮らしなら泊めてあげたけど、類くんにお願いしますも言えないのに、これ以上類くんに迷惑掛けられないもん。迎えに来てくれたのに、ありがとうすら言えないなんて、ダメだよ藍。」


 そう言うと自分でも悪い事をしたという自覚はあったのか、唇を噛み締めている。

 私に何か話したくて、甘えたくて来たことは分かっている。
 それでもここで甘やかしてしまうのは、藍の為にならないとこの時初めて突き放す事にした。
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