君と始める最後の恋
 そして何も知らない私はというと…─────。


「ねぇ、話してみてよ。」

「な、無茶言わないでください…。」


 後ろにある壁まで押しやられて類くんのご尊顔が凄く近い。
 控えめに言ってドタイプなんですそのお顔!

 今までよく直視出来たな!?って自分を尊敬したいくらいには普段は至近距離で類くんのお顔は見られない。

 それから私の反応が面白いのか、悪戯っ子の顔をして耳元で「聞きたい、郁の可愛い可愛いため口」なんて囁いてくる。

 耳元で話されるのは擽ったくて苦手なのをよく知っているはずなのに、容赦が無い。


「類くん、な、なんて言えば。」

「何でも、君からの言葉なら全部受け止めるよ。」


 その言い方はずるい~!

 このずるさにはいつも勝てなくて、いつも遊ばれている気がする。


「…いつも意地悪だけど、何だかんだ優しい類くんが好き。」


 そう言った後耐えられなくなって小さく「…です。」なんて付け足した。

 そう言っても類くんの反応は何も返ってこなくて、恐る恐る類くんの顔を見ようとする。

 見ようとしたけど、見られなかった。
 その瞬間に思い切り抱き締められたから。


「る、類くん!?」

「今は、顔見んな。」


 私が少しでも顔を見られない様にかかなり強い力で抱きしめられている。

 どんな顔をしているのか見たいのに。


「…やっぱ時々で良い。ため口。俺が持たなくなる。」

「え、ええ?」

「本当、うざ。ため口話すだけで、こんなん…。」


 その続きの言葉は無い。

 類くんの言っている意味が分からなくて何も理解出来なかったけど、きっと今何かを問いかけても答えてはくれないのだろう。
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