君と始める最後の恋
 類くんが離れるまで背中に腕を回して抱きしめ返していると、数分してようやく類くんの身体が離れる。

 心なしか少し顔が赤い気がする。

 熱でもあるのかと思って額に手を伸ばそうとすると、その手を掴まれて額に触れようとするのを拒まれた。


「………い。」

「え?」


 何かを言った事だけは分かるのに聞き取れなかった。

 形の良い薄い唇を動かして、音に鳴らなかった言葉を類くんは間違いなく発している。

 その言葉を知りたくて聞き返すと、言うか言わないか悩んだような表情をしてから、今度は私の髪を耳に掛けてから優しく抱きしめてくる。


「今度は聞き逃すなよ。」


 それからまた息が多めの声で囁いてくる。

 その言葉で私の顔もどんどんと熱を込めていく。

 普段そんなこと言わないのに、今日は何のご褒美なんですか。
 未だに心臓がきゅうっと締め付けられて、ときめきすぎて苦しいの。


─────ため口、可愛すぎて我慢できなくなる。


 今夜は2人きりじゃない。
 別の部屋に藍もいる。
 そんな雰囲気になっている場合じゃないのに、甘すぎておかしくなりそう。
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