君と始める最後の恋
「何でお姉ちゃんと類さん結婚したの。結絃くんとタイプ違うじゃん。」


 まさか藍が結絃の事を覚えていると思わなかった。

 タイプが違うと言われれば、それはそうで思わず苦笑いしてしまう。

 類くんの前では絶対に出来ない話だ。


「…私も好きになるはずじゃなかったんだけどな。意地悪だし、鬼畜だし、不愛想だし、猫被りの嫌な人。」


 入社してすぐ、類くんが指導係になった時はなんて人が指導係になったんだろうって思っていたけど、その裏の言葉の足りなさとか、実は誰よりも面倒見が良くて優しくて、精一杯1人の女性に片思いしていて…。

 こんな話は今や沙羅さんとも関係がある藍には言えないけど。

 今後顔を合わせる事があるかもしれないし、類くんの当時の気持ちを軽々と話すわけにもいかない。

 誰にも言えないけど、間違いなく沙羅さんに片思いしている類くんに惹かれた。


「言葉足りないけど優しい所もあるよ。」

「てっきりお姉ちゃんは結絃くんと結婚すると思ってたな。」

「うーん、それは無かったと思うけど。」


 高校生の時は子供の交際だったし、そこまで考えて付き合ってなんかなかった。

 良い人だったし、好きだったけど…、結婚なんて言われたら、あの時の私は何を考えたのだろうか。
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