君と始める最後の恋
 私の肩に額を付けてはあと深く息を吐いている。

 そんな類くんが可愛くて背中をポンポンと叩くと、頬の赤みが引くまでそうしていた。

 いつもは凄く格好良いのに時々すごく可愛く見えるの何なんだろう。


「…相変わらず余裕ないですね。私はこんなに類くんで頭いっぱいなのに。」

「…本当、ムカつく。余裕なんて…、あったことない。知ってる?君意外と課内で人気あったの。」

「へ?」


 思わぬ言葉に間抜けな声が出た。
 課内で人気があったとか、志織ちゃんとかと間違えているんじゃないのかと思う。


「俺が君と付き合う前からそう。いつも笑顔で可愛いとか、一生懸命とか、全部俺が知ってる情報で、なんなら周りよりも俺の方が君の事を知って好きなのに、周りに取られるんじゃっていつも余裕なかった。」


 そんな噂、聞いた事も無いし、その上で類くんの本音が聞けて思わぬ得を得てしまう。

 何も気にしてなさそうで、飄々としているのに、いつも私が悶々としていた事を類くんも同じように考えていてくれた。

 私だって、いつも綺麗な人が類くんの顔が好きだとか言う度にずっと抑えて我慢してきていたのに。


「郁には悪いけど、俺は心底ほっとしてる。やっと仕事辞めさせてそんな目で見る男達から引き離せるの。」

「…独占欲強すぎませんか。」

「今頃知ったの?君が結婚した男はそういう男。嫌いになった?」


 私の答えなんて知ってるくせに、ほんの少し悪戯心が湧いたのかそう問い掛けて笑う類くん。

 嫌いになんてなる訳無いの、貴方が一番よく知っている癖に。


「好きに決まってます!」

「あ、そ。次は?」

「あ、流した。」


 相変わらず素直じゃない類くんの後を追って資料室を出て行く。
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