君と始める最後の恋
 その後は食堂に行ってカフェスペースに立ち寄る。


「ここも色々あったと思いません?」

「…記憶に無いけど。」

「酷い!BBQのお誘いはここだったし、私が結絃の事を言い出せなくて落ち込んでた時、慰めに来てくれたり!」

「そんなこともあったっけ。」


 あまり記憶に無いのかポケットに手を突っ込んで窓の外を眺めている。

 あのBBQの時から、少しずつ私と類くんの関係が変わりだした気がする。

 沙羅さんからの電話の時、行く気なんて全くなかったのに、類くんが勝手にスマホを奪って行くなんて返事をした。

 あの時行きたくなかったのは、類くんと始めてデートした後で、沙羅さんの代わりになる?なんて言った類くんの違和感が凄くて、きまずくて…、今考えても少し複雑だ。


「…BBQの時、言ったと思うけど俺が来てほしかったって言ったの覚えてる?」

「沙羅さんと充さんの仲良い姿を1人で見たくなかったからですよね。」

「前はそうだって思ってたけど、今考えたら気になってたんだって思うよ。」

「え?」

「あの日のBBQ、俺も断るつもりだったから。」


 聞いたことの無い話に少しだけ驚いた。

 沙羅さんに会う為なら、アウトドアが苦手でもどこでも行くような人だったし、そんな人がBBQを断るつもりだったって。


「…何で?」

「不思議と沙羅に会いたいって思わなかった。断ったら、君だけ誘うからって言われて釣られたけど。」

「私だけ行かせばよかったのに。」

「そんなの出来るわけないでしょ。俺を好きだって言っている君が、俺の好きな人と兄さんを目の前にしてどんな心境で行くの。」


 その時から一人にしない様にしてくれてたんだなと思うと、やっぱり類くんの優しさを感じる。

 別にそれも類くんが気にする所でもないのに。
 色々考えて、一緒に来てくれていた。


「それに、不思議と沙羅と兄さん見てても辛くなかったから。」

「そんな早くに私の事気になってたんですか?」

「…本当、何でも口にしないと気が済まないよね、君。」


 少し笑って言う類くんの顔が優しくて、目が離せない。

 本当に出会った時よりも色々な表情を見せてくれるようになった。不愛想で、無表情で何考えているか分からない人だったのに。

 最初はこの人が営業なんて大丈夫なの!?って思ったくらい。
 それでもこの人は私が入社した時にはもうみんなに頼られていて、すごく出来る人だった。


「言葉にしないと普通は伝わらないですけどね!」

「君には伝わってるから良いじゃん。」

「…本当、ああいえばこういう。」

「何それ、自己紹介?」


 憎まれ口をたたき合いながら次の最終目的地へと向かう。
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