君と始める最後の恋
 思っていた何倍も小さくて、類くんは腕の中の子を見てふっと優しく笑みを零したかと思えば、目から雫が光って零れるのが見えた。

 こんなに長く一緒に居たのに、類くんが涙を流す瞬間を初めて見て驚く。

 胸がいっぱいになって言葉も出ないのか、測定の為に助産師さんに子供を返すと力が抜けた様に椅子に座っている。

 この人でも泣く事あるんだ。


「どうでした?」

「…小っちゃくて壊れそう。不安になる。」

「ちゃんと守ってあげないとですね。」


 そう言いながら体重を測ったりされているわが子の様子を見ながら類くんが「…そうだね」と小さく呟いていた。

 それからこちらに向くと、類くんの顔はいつもと変わらない表情に戻っている。


「ありがとう、無事に”(つむぎ)”を産んでくれて。」


 そう言いながら私の手を優しく包み込むように握る。

 そんな類くんの言葉に今度は私の涙腺が緩んで、緊迫していた物が全て溶け切って零れる。

 涙を零してもなんとか笑顔で首を横に振る。



─────一ノ瀬 紬。



 私達の愛しくて、仕方ない子。
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