君と始める最後の恋
 6年前の今日。

 綺麗な夜景の前で赤のアネモネを貰った。
 そのアネモネは今もドライフラワーにしてずっと飾られている。

 ドライフラワーの永久保存なんて出来るのかと思って、調べたらフリーズドライフラワーというものがあると知ってすぐに専門店でお願いした。

 あの花は、あの花だけは失いたくなかった。
 類くんが初めて気持ちにして残してくれたものだったから。

 枯れてしまったかもしれないけれど、気持ちだけはあの日よりも強くなっているが、そのアネモネを見る度にその時の気持ちのことも思い出すのだ。


「あれももう、6年も前なんですね。」

「本当、昨日の事みたいに感じるのに。」


 そんなに長く類くんと一緒に居るんだと思ったら、感慨深い。

 色々すれ違って、こんな風に夫婦になって一緒に長くいるなんて片思いしていた時の私に言ったら腰を抜かして倒れてしまいそうな気がする。

 過去の事を思い出している私の手を優しく取って、恋人繋ぎで離さない様に握ってくれる。前まで外でこんな風に手を繋いでくれる人じゃなかった。外で触れ合うなんてって言う様な人だったのに、随分甘くなった気がする。


「良いんですか?外ですけど。」

「今日くらいは良いでしょ。普段は紬と手繋いでるし。」

「…少し寂しかったりするんですよ。類くんが、紬、紬ってするの。」

「寂しい?何で?」

「そりゃ…。」


 何だか自分の子に嫉妬している様で恥ずかしい。

 時々私もかまってほしいかもなんて思ってしまって、いつでも抱き着いたりできる紬が羨ましいのかもしれない。

 そんな私の態度で察したのか類くんがふっと笑みを零して少し歩きだす。


「今日は良いんじゃない?俺も今日は君に構いたい気分だし。」

「か、構いたい気分って、そんなきまぐれな…。」


 類くんに引かれるままゆっくり歩いてこの景色を堪能する。

 最近パパとしての類くんしか見ないから、旦那さんとしての類くんが久し振りでときめいてしまう。
< 422 / 426 >

この作品をシェア

pagetop