俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「……ひと言添える管制官は、なにも彼女だけではないのでは?」
折に触れて、業務とは関係のないひと言を挟む管制官は稀にいる。本来なら必要のないこととはいえ、場合によってはさっきの自分のように精神的にほっとさせてくれるのは否定しない。それが印象的で、声だけは知っているという管制官が彼女に限らず数人いる。ただ、顔と名前が一致するのは彼女だけだが。
「だが最近は見かけなくなったぞ。いや、聞かなくなったと言うべきか。先月行った海外の管制官なんて、虫の居所が悪いのかってくらい不愛想で」
機長が、いかにも不満だと言う口調で愚痴をこぼす。
あくまでそれは、受け取り手の印象にすぎない。必要事項を的確に伝えてきたのなら、職務上はなにも問題ないはずだ。
とはいえ、そこは人間同士のやりとりになる。お互いの気分を害さず、気持ちよく交信ができるに越したことはない。
「知ってるか?」
「なんですか?」
「真由香ちゃん。声だけ聞いていると、いかにも落ち着いた大人の女性って想像しがちだろ? だけど実際は小柄で、見た目はかわいい系の明るい子だそうだ。そのギャップが、またいいんだってさ」
正面を向いたままくっくと笑う機長に向けた俺の視線は、少しばかり鋭くなっていたかもしれない。
彼女とは実際に対面しているから、その認識で間違いないのは知っている。が、あえてなにも言わなかった。
「以前、合同の飲み会に真由香ちゃんが一度だけ顔を出したらしい。参加したやつの話によれば、プライベートでも気遣いのできる本当にいい子だったとさ。残念なことに、伝手を使って声をかけても、それっきりいっさい来ないようだが」
折に触れて、業務とは関係のないひと言を挟む管制官は稀にいる。本来なら必要のないこととはいえ、場合によってはさっきの自分のように精神的にほっとさせてくれるのは否定しない。それが印象的で、声だけは知っているという管制官が彼女に限らず数人いる。ただ、顔と名前が一致するのは彼女だけだが。
「だが最近は見かけなくなったぞ。いや、聞かなくなったと言うべきか。先月行った海外の管制官なんて、虫の居所が悪いのかってくらい不愛想で」
機長が、いかにも不満だと言う口調で愚痴をこぼす。
あくまでそれは、受け取り手の印象にすぎない。必要事項を的確に伝えてきたのなら、職務上はなにも問題ないはずだ。
とはいえ、そこは人間同士のやりとりになる。お互いの気分を害さず、気持ちよく交信ができるに越したことはない。
「知ってるか?」
「なんですか?」
「真由香ちゃん。声だけ聞いていると、いかにも落ち着いた大人の女性って想像しがちだろ? だけど実際は小柄で、見た目はかわいい系の明るい子だそうだ。そのギャップが、またいいんだってさ」
正面を向いたままくっくと笑う機長に向けた俺の視線は、少しばかり鋭くなっていたかもしれない。
彼女とは実際に対面しているから、その認識で間違いないのは知っている。が、あえてなにも言わなかった。
「以前、合同の飲み会に真由香ちゃんが一度だけ顔を出したらしい。参加したやつの話によれば、プライベートでも気遣いのできる本当にいい子だったとさ。残念なことに、伝手を使って声をかけても、それっきりいっさい来ないようだが」