俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「細かいところはおいおい話をしていこうと、言ったよな?」

 たしかにその通りだ。
 でも、前提を忘れてもらっては困る。

「私が寝泊まりするスペースには問題ないからって、言いましたよね?」

 なんとか冷静な口調で主張したが、心の中は嵐が吹き荒れている。

「問題はない」

 しれっと返されて、唖然とした。

「だって、ベッドはひとつしかないんですよ!?」

 急ぎでない事柄は必要に応じて考えていけばいいが、寝るところに関しては早急に対処すべき問題だ。

「俺は今夜から五日間のフライトに出る。しばらく留守になるから、その間は気兼ねなくベッドを使えばいい」

 そうはいっても、五日なんてあっという間に過ぎていく。
 新たなベッドを購入するといっても、届くまでに数日はかかるだろうから間に合わない。そもそも、シフトによっては受け取ったり設置したりする時間の確保が難しい。さらに、いらなくなったときの処理にも困る。

「で、ですが、その後はどうするつもりです? 一緒に寝るなんて言語道断ですが、そもそもお互いに生活リズムが合わないので、ベッドがひつとしかなければ迷惑をかけてしまいます」

 パイロットは、とくに睡眠に気を使う人が多いと聞いている。
 彼を起こさないように、神経をとがらせる場面は多くあるだろう。逆に、椎名さんだって私に対してそうなるときもあるはず。その遠慮が、お互いのストレスになる。

「さっきも見た通り、かなり広めのベッドだから大丈夫だ」

 たしかに、大人が三人いても余裕で寝られそうだった。ベッドの端と端を使えば、彼にとってはなにも問題ないらしい。

 けれど、広さ的に可能とはいえさすがにない。やはり私はリビングで眠るべきかと、ソファーに視線を落とした。

 私と椎名さんが並んで座っても、十分に余裕がある大きさだ。彼はともかく、私なら足を延ばしてもまだ余裕がある。ベッドにするには若干硬めな気はするが、寝られないわけじゃない。
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