俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「って、準備をしないと」

 ハッとしてキッチンに引き返し、飲み物を用意する。

 しばらくして、着替えを済ませた翔さんがダイニングへやってきた。

「真由香は、料理が得意なんだな」

 テーブルに並べた料理を、興味津々な様子で見回しながら彼が言う。

「そんなに手の込んだものじゃないし、美味しいかどうかは……」

 味はたぶん大丈夫なはずだけど、なんだか急に不安になってきた。

 向かい合わせに席に着き、密かに彼を観察する。フォークを手にした翔さんは、真っ先に煮込みハンバーグに手をつけた。
 小さな反応も見逃さないように、彼の一挙手一投足を見つめる。

「美味しい」

 そのひと言に、肩から力が抜ける。知らずに詰めていた息を、ほうっと吐き出した。

「よかった」

 そう答えながら、私も止まったままだった手を動かし始めた。

 しばらく当たり障りの会話が続いた後に、私の方から話しを切りだす。

「ここでお世話になっている間は、できる限り家事を手伝わせてください。でないと、なんだか落ち着かなくて」

「それはありがたいが、真由香にも仕事があるから無理はしないでほしい」

 もちろんだと、しっかりうなずき返した。
 よかった。彼とは五日ぶりに顔を合わせたけれど、意外と普通に話せている。

「そうだ、真由香。これを受け取ってほしい」

 食べ終えたところで、翔さんが細長い箱を差し出してきた。中身は、おそらくネックレスだと思われる。
 戸惑いつつ、とりあえず受け取る。

「え?」

 そこにハイブランドのロゴが入っているのに気づいて、驚きの声をあげた。

「滞在先で、見つけたんだ」

 中身はなんであれ、それなりに高価であることに間違いないだろう。理由もなく受け取っていいものではないと、目で彼に訴えた。
 けれど翔さんは、無言のまま有無を言わさない視線を返してくるのみ。

 仕方がないとため息をこぼしながら恐る恐る箱を開けると、中にはチェーンにシンプルなリングを通したものが入っていた。
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