俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
 さすがに指にはめたまま過ごす勇気はない。けれど彼が望むのなら、ネックレスとして服の下に隠してつけようと思う。

「えっと……ありがとう、ございます」

 チラッと彼の方を見る。

「と、とりあえず、チェーンに通してつけておきます」

 そう言い終えてすぐに、気恥ずかしくて顔をうつむかせた。

 私の肩に手を添えられて、あからさまに体が跳ねる。

「真由香は俺のものだ」

 不意に耳もとで好みの声にささやかれて、鼓動がドクドクと打ちつけてきた。

「なっ、なっ」

 動揺して意識が散漫になっていたせいで、結局は彼の接近を許してしまった。
 たまらず両手で顔を覆ったが、隠すのは耳にするべきだったと後悔する。

「ほかの男に、靡かないでくれよ」

 追い打ちをかけるように、翔さんがささやきかけてきた。

 きっと彼は、自身の安穏を守るために今は私を手放すわけにはいかないのだ。そうに違いないと言い聞かせていなければ、本当に勘違いしそうになる。

 固まった私を放って、翔さんが食器を手にキッチンへ向かう。うろたえるのは私ばかりで、彼はいたって通常運転だ。

「わ、私が片づけておくから」

 これ以上この人と同じ空間にいては、なにをされるかわからない。

「そう? じゃあ俺は、風呂の用意をしてくるから」

 家主を追いやるようで申し訳ないが、視界から翔さんが消えたことでようやく肩の力が抜けた。
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