俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う

偽りの夫婦

「お疲れ、真由香」

 仕事を終えてパウダールームで鏡に向かってメイクを直していたところに、同僚の水沢(みずさわ)(あずさ)が映り込む。

「ああ、梓。お疲れさま」

 鏡越しに、彼女と視線を合わせた。

「真由香もこれで上がりなら、久しぶりにお茶でもしない?」

 時刻は十五時半をわずかに過ぎたところ。早番だった今日は、この時間で退勤になる。

「いいね。付き合う」

 私の隣でポーチを開いた梓を、チラリと見る。
 ともに航空管制官として働く彼女は、去年この羽田空港に異動してきたばかりだ。
 お互いに二十八歳と年齢が同じだったこともあり、すぐに打ち解け合った。サバサバとした梓と一緒にいるのは心地よく、プライベートでも親交を深めている。

 すらりと背が高い彼女は、切れ長な目に高い鼻というはっきりとした顔立ちの美人だ。ベリーショートの黒髪がよく似合っているし、耳もとで光る赤いピアスが彼女のクールな印象を際立たせている。

 再び、目の前の鏡に視線を戻す。

 梓の隣に身長が平均以下の私が立つと、見事なまでの凸凹具合だ。
 目はやや大きめで唇がぽってりとしている自他ともに認める童顔な私と彼女とでは、他者に与える印象は真逆なものだろう。自分にないものを持つ梓が羨ましいなんていう妬みすらどうでもよくなってしまうほど、私たちは正反対な外見をしている。

 メイク直しを終えて、ひとつに結んでいたセミロングの髪を解く。手櫛で軽く整えて、梓と共にパウダールームを後にした。

「いつものカフェでいい?」

 歩きながら、梓の問いかけにうなずき返す。彼女の言うカフェとは、時間が合えばよくふたりで立ち寄る空港内のお店だ。
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