俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「……私の?」

 バッグから完全に出して、私に向けて掲げて見せてくれる。
 ぼんやりつぶやくと、翔さんが笑みを浮かべた。

「今夜のために、俺に真由香を着飾らせてほしくて」

 甘い口調に、ドキリとする。

「誰がなんと言おうと、真由香は俺の妻だろ? だから、当然の権利だな」

 その言い方は、まるで私が「偽装」とか「仮」なんて反論して遠慮するのをけん制しているかのようだ。

「大切な女性を、自分の手で着飾らせたいと思うのは当然だろ?」
「大切なって……」

 彼は私を愛しているわけではない。
 大切だって言うのも、自身の安寧な生活を守るためにすぎないだろう。

 その事実が苦しいはずなのに、翔さんがこうして気にかけてくれることにうれしくなる。
 仮だろうがなんだろうが、今は私だけを見てくれている。胸の痛みを無視してそう自分に言い聞かせると、自然と口角が上がった。

「ほら、着て見せてよ」

 そう言って私にドレスを手渡すと、翔さんは部屋を出て行った。

 彼を待たせてはいけないと、我に返って着替え始める。
 サラリとして肌触りがよく、それだけで高価なものだとわかってしまう。
 長さはひざ丈で、腰よりも高い位置で切り替えが入っているため、実際よりも背が高く見える。
 胸もとから袖にかけて大部分がシースルーになっているが、上品なレースがふんだんに使われていて露出は気にならない。
 姿見の前に立って、いろいろな角度から確認する。

 驚くほど体にフィットするサイズ感で、着心地は抜群にいい。デザインも素材も、すべて私好みだった。
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