俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「そろそろ入っていいか?」

 少し待たせ過ぎたかもしれない。翔さんの方から声がかかり、再び室内に招き入れた。
 じっと見られているのを感じて、そわそわする。気恥ずかしくなって、近づいてくる彼から目を背けた。

「ど、どうですか?」

 高まる緊張に耐えきれなくなって、こちらから口を開いた。

「本当によく似合っている。ああ、思った通り真由香にぴったりだ」

 熱い口調でそう言いながら私の前に立った翔さんは、それからふわりと抱きしめてきた。

「綺麗だ、真由香」

 間近でささやかれて、瞬時に全身が熱くなる。

「ち、近いです」

 我に返ってぐっと押すと、すぐに離れてくれてほっとした。
 私の肩に手を置き、体を一回転させながらさらにじっくりと見つめてくる。

「すごく着心地がいいし、デザインも私好みです。それに、サイズが驚くほどぴったりで」

 よくこれほど合うものを見つけられましたねと、ようやく私を解放した彼を見上げた。

「あたりまえだ。何度もこの腕の中に抱いたんだから」
「だ、だ、抱いた!?」

 思わず大きな声をあげると、翔さんはわざとらしく耳をふさいだ。それからニヤリとする。

「事実だろ? ほら、このベッドで」

 指し示された手の先を視線で追い、一緒に過ごした夜を思い出して顔が熱くなる。

 が、あくまで抱きしめられてながら寝ているだけだ。決して一線は超えていないし、そうする予定もない。

「言い方、言い方に気をつけましょうよ」

 言葉のチョイスが間違っている。

 平然としている彼に対して、私だけが焦りを募らせる。

「誤解を招きかねませんから! 私たちは、ただ同じベッドで眠っているだけです!」

 ここは譲らないという勢いで言いきる私を、翔さんは涼しい顔で眺めていた。

「誤解されて困る相手はいないのだから、小さなことは気にするな」

 小さくない!と、心の中で反論する。
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