俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「それより、本当によく似合っている。こんなに綺麗な真由香を連れて歩けるなんて光栄だな」
「ほ、褒めすぎです」

 いろいろと限界で、両手で顔を覆う。

 それが間違いだった。視界をふさいだせいで彼が近づいたことに気づけず、あっと思ったときには再び抱きしめられていた。

「俺のかわいい奥さん。今夜が楽しみだ」

 羞恥心に耐えるよううつむいている間に、体が離される。それから、ポンポンと頭をなでられた。

「時間はまだあるから、ゆっくり準備をするといい」

 彼が部屋を後にしてしばらく後。ようやく動きだした私は、ガーメントバッグをどけた下にバッグと靴の箱が隠れていたことに気づいた。

 私のためにこんなにもお金を使ってとこぼしつつ、箱を開ける。中にはドレスに似合うパールホワイトのバッグと、同系色の靴が入っていた。もちろん、靴のサイズはぴったりだ。

「意地悪なのに優しいって、なによ」

 その気遣いがうれしくて、だけど照れ隠しに八つ当たりのような言葉を漏らした。

 せっかくのデートだし、畏まった場に行くかもしれないと考えて、いつもより念入りにメイクをする。
 ドレスの見た目と合うのはどの色か。少しでも明るく見せたい。想い合った恋人同士のデートというわけでもないのに、そんなふうに試行錯誤する時間が楽しい。
 いつもは簡単にまとめている髪も、今日は編み込みを入れて少し凝ったものにした。

 最後に、再び姿見の前に立つ。
 おかしなところはないかと確認しつつ、気合が入りすぎたかもと少しだけ後悔する。
 でも、今さら直すような時間はない。経験上、直そうとすればするほどひどくなっていくものだ。

 遅れてはいけないと、翔さんの待つリビングへ足を向けた。
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