俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「ありがとう」

 一応ブランド物とはいえ、彼が私に遣った金額に比べたら桁が違う。

「ちょっとしたものしか返せなくて」

 申し訳ないと、再び口にしかけたところで手を握られる。

「値段じゃない。これを選んでいたときの真由香は、頭の中が俺でいっぱいになっていたんだろ?」

 実際にそうだったとしても、言い方ひとつで意味深に聞こえる。大げさすぎだ。

「それに」

 まだなにかあるのかと、言葉をきった翔さんに首を傾げた。

 私が油断している隙に手を軽く引かれ、彼の胸もとに飛び込んでいた。

「今夜は、朝まで一緒にいてくれるんだろ? これ以上ない贈り物だ」

 全身が一気に熱くなる。

 だから、言い方!
 彼の胸もとに手を当てて、なんとか距離を取る。

「ご、誤解しか生まない言い回しはやめましょうよ」
「なんだ、今さら。もう何度も俺と寝ただろ?」

 余裕たっぷりな態度で、意地悪に言い放つ。

「言葉のニュアンスに、問題がありすぎです!」

 またこの流れだと、からかわれているのがわかっていても恥ずかしくて仕方がなかった。

 赤くなっているだろう熱い頬を手で覆ってうつむく。これではまるで、私が彼を意識しているのがバレバレだ。

「かわいい反応だな」

 うろたえる私を、翔さんがくすくす笑う。その余裕たっぷりな様子が憎らしいのに、羞恥心に襲われて顔を上げられないでいた。

 そのうち、するすると衣擦れのような音が聞こえてきた。
 なにをしているのかと、ギョッとしながら彼の方をうかがう。
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