俺様パイロットは容赦なく愛を囁き偽り妻のすべてを奪う
「そうだなあ。私は〝お前だけだ〟とか〝俺が守ってやる〟なんて言われてみたい」
自分で言いながら、「きゃあ」小さく照れる梓がかわいらしい。
「うんうん。それもいい!」
彼女の好みはワイルドなイケおじだ。どんな場面に出くわしたらそんなセリフを言われるのかと、現実味に欠けるのはこの際どうでもいい。とにかく、疲れた心と体を甘やかしてほしい。
「そうそう。昨日、私が担当したOAJの機長さんの声がすっごくよかったの! あの渋さは痺れるわあ」
うっとりとした表情で梓が語る。相手の名前も年齢もわからないのは、言わなくても察している。
「真由香はどう? 最近聞いたいい声はなかった?」
尋ね返されて、首を傾げながら記憶を掘り起こす。
「そうだなあ……耳心地のよい声は何回か出会ったけど。あっ、そうそう。RAJの副機長さん! 交信中は淡々としているのに、私が『いってらっしゃい』って添えたらやわらかい声で『いってきます』って返してくれるんだけど、その声がたまらなくよくて。あのギャップはずいって」
だんだんマニアックな話になっていくが、梓なら「わかる」と引かずに応じてくれる。
「真由香はそういう気遣いを忘れないもんね」
「最初は、無意識に言っていたんだけどね。今では習慣づいちゃった。それでいい声の副機長さんだけど、たしか椎名さんだったかな」
交信中に、お互いに名乗りはしない。どうして知っているのかと、梓が不思議そうに見てきた。
「前にね、搭乗訓練で一緒になった人なの」
「ああ、なるほど」
搭乗訓練とは、実際に運航している旅客機のコクピットにあるジャンプシートに乗り、パイロットの業務を見学するという管制官に義務づけられた研修だ。逆にパイロットが管制室を訪れる研修もある。
管制官としては、この訓練によってこちらが指示を出している間にパイロットたちがどういう状況にあるのかを知ることができる。
交信中のパイロットは、必ずしもそれだけに専念しているとは限らない。離陸時も着陸時も、計器のチェックやその他諸々の作業に追われていた。そんな流れを知れば、どのタイミングで指示を出したらもっとも伝わりやすいかも掴めてくる。
自分で言いながら、「きゃあ」小さく照れる梓がかわいらしい。
「うんうん。それもいい!」
彼女の好みはワイルドなイケおじだ。どんな場面に出くわしたらそんなセリフを言われるのかと、現実味に欠けるのはこの際どうでもいい。とにかく、疲れた心と体を甘やかしてほしい。
「そうそう。昨日、私が担当したOAJの機長さんの声がすっごくよかったの! あの渋さは痺れるわあ」
うっとりとした表情で梓が語る。相手の名前も年齢もわからないのは、言わなくても察している。
「真由香はどう? 最近聞いたいい声はなかった?」
尋ね返されて、首を傾げながら記憶を掘り起こす。
「そうだなあ……耳心地のよい声は何回か出会ったけど。あっ、そうそう。RAJの副機長さん! 交信中は淡々としているのに、私が『いってらっしゃい』って添えたらやわらかい声で『いってきます』って返してくれるんだけど、その声がたまらなくよくて。あのギャップはずいって」
だんだんマニアックな話になっていくが、梓なら「わかる」と引かずに応じてくれる。
「真由香はそういう気遣いを忘れないもんね」
「最初は、無意識に言っていたんだけどね。今では習慣づいちゃった。それでいい声の副機長さんだけど、たしか椎名さんだったかな」
交信中に、お互いに名乗りはしない。どうして知っているのかと、梓が不思議そうに見てきた。
「前にね、搭乗訓練で一緒になった人なの」
「ああ、なるほど」
搭乗訓練とは、実際に運航している旅客機のコクピットにあるジャンプシートに乗り、パイロットの業務を見学するという管制官に義務づけられた研修だ。逆にパイロットが管制室を訪れる研修もある。
管制官としては、この訓練によってこちらが指示を出している間にパイロットたちがどういう状況にあるのかを知ることができる。
交信中のパイロットは、必ずしもそれだけに専念しているとは限らない。離陸時も着陸時も、計器のチェックやその他諸々の作業に追われていた。そんな流れを知れば、どのタイミングで指示を出したらもっとも伝わりやすいかも掴めてくる。