さくらびと。美桜 番外編(2)
裕紀は黙って彼女の背中に手を添えた。




美桜がしゃくりあげるたびに細い肩が上下する。










「もっと色んな所に行きたかった……もっと美味しいものを食べたかった……子供を産んで…お母さんになって…裕紀と幸せな家族を築きたかったのに…」







指の間から涙が流れ落ちる。








「もっと……あなたと一緒に…。ずっとずっと、笑っていたかったのに……」








美桜は裕紀の膝に顔を埋めた。








「裕紀ぃ……やだよぉ……死にたくない……死にたくないよぉ……」







潮風が二人の髪を絡ませていく。







裕紀はそっと彼女の髪を撫でながら呟いた。







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