さくらびと。美桜 番外編(2)
自分のために仕事を削る裕紀の姿を見るのは辛かった。







医療現場の貴重な機会を逃しているのではないか。





将来有望な外科医の卵である夫の可能性を自分が奪っているようで申し訳なかった。






「無理なんかしてないさ。むしろここで君を見てるのが僕の希望なんだ」







その言葉に思わず涙が溢れた。こんな時まで優しいのはなぜだろう。








「あのね……」





「うん?」




「お願いがあるんだけど」







美桜は上体を起こそうとした。裕紀が慌てて支える。







「どうしたの?急に」








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