さくらびと。美桜 番外編(2)
「君がいない未来なんて想像できない。自分の夢のために君を犠牲にするような人間になりたくないんだよ」





握られた手に力が込められる。






「それにこれは夢を諦めてるんじゃない。人生最大の勉強してるつもりだ。『愛する人を最後まで守る方法』っていう最高の課題を与えてくれたんだよ」







真摯な瞳に射貫かれ美桜は言葉を失った。






こんなにも深く愛されているのに疑ってしまった自分を恥じた。







「ごめんなさい……」








「謝ることないよ。不安になるのは当然だ」







時計を見た裕紀が立ち上がる。






「美桜。じゃあ行ってくる。午後は難しい手術の見学があるからね」







「うん。行ってらっしゃい」






ドアが閉まった後も美桜はその場所をじっと見つめていた。







幸せすぎて怖い。






こんな日々が永遠に続いて欲しいと願わずにはいられない。







「もう、このまま、時が止まればいいのになぁ…」








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