さくらびと。美桜 番外編(2)
彼女は裕紀の手元の花瓶を見て微笑んだ。
中には今日買ったばかりの八重桜が活けられている。
淡いピンクの花弁が透明なガラスの中で可憐に踊っていた。
「綺麗ね。これ、奥さんが選んだの?」
「いいえ、僕です。昨日の大学の帰りに花屋で選びました。」
倉橋の表情が僅かに曇った。
「そう…美桜さんも外出できたらいいのだけど、…最近は少し症状が長引く時間が増えてきてるようね」
「ええ……でも」
裕紀は洗い終わった花瓶を大切そうに両手で包んだ。
「美桜は花が好きですから。症状だけに囚われず、少しでも気分転換になればなと」