さくらびと。美桜 番外編(2)




彼女は裕紀の手元の花瓶を見て微笑んだ。







中には今日買ったばかりの八重桜が活けられている。





淡いピンクの花弁が透明なガラスの中で可憐に踊っていた。






「綺麗ね。これ、奥さんが選んだの?」





「いいえ、僕です。昨日の大学の帰りに花屋で選びました。」






倉橋の表情が僅かに曇った。










「そう…美桜さんも外出できたらいいのだけど、…最近は少し症状が長引く時間が増えてきてるようね」






「ええ……でも」







裕紀は洗い終わった花瓶を大切そうに両手で包んだ。







「美桜は花が好きですから。症状だけに囚われず、少しでも気分転換になればなと」







< 59 / 97 >

この作品をシェア

pagetop