さくらびと。美桜 番外編(2)
ポケットからスマートフォンを取り出し、カメラロールを開く。





一番上にあるのは去年の春、二人で撮った桜の下での写真。







その写真には美桜が車椅子に座ったまま、裕紀は彼女を支えながら笑っている。







「桜、もうすぐだな……」










花弁を孕んでふくらむ桜の蕾を撫でながら呟く。蕾が満開に花開くまであと一歩だ。






彼女は最期まで生きようとしたのだ。








その証として今ここに自分がいる。









「(ありがとう…)」








と心の中で感謝を伝えながら、スマートフォンをポケットにしまったその時だった――









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