クズ男の本気愛
嫉妬? 意地を張ってる? 相手が美人だから?
確かに、薫さんは綺麗な人だって思った。女友達と二人きりで会うのを反対したのは、嫉妬心がなかったとは言えない。でも、普通の感覚なんじゃないの? 私が謝るべきことなのだろうか。
それに私が大輔に別れを切り出したのは、彼が私の気持ちを最後まで考えてくれなかったことが一番の原因なのだ。思いやりがなかった、それが一番なのに、どうして嫉妬して心が狭い女みたいに言われなくちゃならないの……?
一人がへらへら笑いながら私の肩に手を置く。
「女はどーんと構えて待ってるのが一番よ? 特に、高城みたいなタイプは! 黙って静かに家庭を守ってますっていうのが、男はクるんだから。妬みとかやめろって」
「そーそー。ちゃんと大輔に謝りな?」
あまりに悔しくて言葉が出てこない。言いたいことが多すぎると、どれもぐちゃぐちゃに絡まって外に出てきてくれないのだと、初めて知った。
「わ、私は……」
「あの。先輩に触らないでもらえます?」
気がつけば私の肩に乗っていた手を、まるで汚物を扱うように摘まんでいる霧島くんがいた。彼は顔をゆがめ、これまたゴミを見るような目で二人を眺めている。
そして私を庇うように前に立った彼は、めんどくさそうな声を出した。
「部外者が何言ってるんですか。一方の話だけ聞いて、二人で一人を責めて恥ずかしくないですか? だっさ」
「は? なんだお前」
「こっちのセリフだよ」
途端、霧島くんが低い声を出したので、二人とも戸惑うように目線を泳がせた。
「聞いてれば好き勝手言って。人の気持ちを考えようともしない男のくだらない主張、本当に笑えますよ。先輩は謝る必要ないじゃないですか。こんな素敵な人が彼女でいてくれたのに、先輩のことを何も考えず自分のやりたいことだけをやるなんて、最低ですよね」
霧島くんの怒りの声に、二人は怯んだ。そんな彼らを蔑んだ目で見下ろした霧島くんは、私に声を掛ける。
「行きましょ。時間の無駄ですよ。ピザ、早く食べたいです」
「う、うん……」
私は霧島くんに促されるまま、その場を離れた。一度だけ同僚たちを見ると、二人とも不満げに、でも戸惑ったように私たちを見送っていて、そんな顔を見ただけで少し気持ちが落ち着く気がした。
……あんなに頭がぐるぐる混乱して、怒りと情けなさでいっぱいだったのに。
また、彼に助けられてしまった。
数分歩いたところで、黙っていた霧島くんがポツリと呟く。
「あーなんか、出しゃばってすみません。俺も十分部外者なんですけど……」
反省したように彼が言ったので、私は勢いよく隣を見て首を横に振った。
「ううん! 謝るのは私の方! なんか、今日は変なところばっかり見せちゃっててごめんね。私、なんか頭がぐちゃぐちゃで何も言い返せなくて……だから、霧島くんが助けてくれて嬉しかったよ」
「え……ほんとですか?」
「うん、ありがとう」
すると彼は、ほっとしたように表情を緩めて笑った。それはまるで褒められた子供のような顔で、私もつい目を細めてしまう。
後輩である彼に助けてもらってばっかりで申し訳ない。でも同時に、やっぱり嬉しかった。
「ていうか……やっぱり先輩の元カレクズじゃないですか。あれ、自分の都合のいいように友達に言いふらしてますよね?」
「みたいだね……大輔は、友達が多いタイプで……同期みんな私たちのこと知ってたから、別れたことは広まるだろうなとは思ってたんだけど」
「何がよかったんですか? 元カレの」
「えっと……まあ、明るくて飾らない感じとか? 私が作った料理とかいつも大げさなぐらい美味しいって言って」
「そんなの、俺だって絶対美味しいって食べますよ!!」
突然足を止めて彼が大きな声を出したので、ぎょっとしてしまう。いつになくどこか余裕がなさそうな霧島くんを、唖然と見つめた。
「ど、どうしたの、そんな大きな声出して……」
「だって、俺だって暗くはないと思うし、自分では飾ってないつもりだし、先輩が作ってくれた料理なら美味しく食べる自信あるし……」
「う、うん……?」
「……え、あれ、どうしたんだろう……」
彼自身も戸惑うような表情になり、私たちはお互い黙り込んだ。でも私はすぐ、彼をフォローするように笑顔になる。
「優しいんだね。私がぼろくそ言われてるの、一緒に怒ってくれたんでしょう」
「……まあ、それは、はい」
「ありがとう。霧島くんって結構熱い感じなんだね。目の前に困ってる人がいたら放っておけないタイプだ」
「……え、別に他の人なら……あ……いや……」
彼は再び困ったように黙る。私はとりあえず話題は終わらせて、お店に行こう……そう提案しようと思ったとき、ふと霧島くんの表情が変わった。
「あ」
「ん? ほら、寒いからお店に行こうよ」
「あれ、あー、そっか」
「なに?」
霧島くんは私の目線に合わせるように、少しだけこちらを覗き込む。そして、納得した、というように何度か頷いた。
「わかった」
「何が?」
「俺、璃子先輩が好きなのかも」
まさか、そんなぶっ飛んだセリフを出してくるなんて、夢にも思わなかった。
確かに、薫さんは綺麗な人だって思った。女友達と二人きりで会うのを反対したのは、嫉妬心がなかったとは言えない。でも、普通の感覚なんじゃないの? 私が謝るべきことなのだろうか。
それに私が大輔に別れを切り出したのは、彼が私の気持ちを最後まで考えてくれなかったことが一番の原因なのだ。思いやりがなかった、それが一番なのに、どうして嫉妬して心が狭い女みたいに言われなくちゃならないの……?
一人がへらへら笑いながら私の肩に手を置く。
「女はどーんと構えて待ってるのが一番よ? 特に、高城みたいなタイプは! 黙って静かに家庭を守ってますっていうのが、男はクるんだから。妬みとかやめろって」
「そーそー。ちゃんと大輔に謝りな?」
あまりに悔しくて言葉が出てこない。言いたいことが多すぎると、どれもぐちゃぐちゃに絡まって外に出てきてくれないのだと、初めて知った。
「わ、私は……」
「あの。先輩に触らないでもらえます?」
気がつけば私の肩に乗っていた手を、まるで汚物を扱うように摘まんでいる霧島くんがいた。彼は顔をゆがめ、これまたゴミを見るような目で二人を眺めている。
そして私を庇うように前に立った彼は、めんどくさそうな声を出した。
「部外者が何言ってるんですか。一方の話だけ聞いて、二人で一人を責めて恥ずかしくないですか? だっさ」
「は? なんだお前」
「こっちのセリフだよ」
途端、霧島くんが低い声を出したので、二人とも戸惑うように目線を泳がせた。
「聞いてれば好き勝手言って。人の気持ちを考えようともしない男のくだらない主張、本当に笑えますよ。先輩は謝る必要ないじゃないですか。こんな素敵な人が彼女でいてくれたのに、先輩のことを何も考えず自分のやりたいことだけをやるなんて、最低ですよね」
霧島くんの怒りの声に、二人は怯んだ。そんな彼らを蔑んだ目で見下ろした霧島くんは、私に声を掛ける。
「行きましょ。時間の無駄ですよ。ピザ、早く食べたいです」
「う、うん……」
私は霧島くんに促されるまま、その場を離れた。一度だけ同僚たちを見ると、二人とも不満げに、でも戸惑ったように私たちを見送っていて、そんな顔を見ただけで少し気持ちが落ち着く気がした。
……あんなに頭がぐるぐる混乱して、怒りと情けなさでいっぱいだったのに。
また、彼に助けられてしまった。
数分歩いたところで、黙っていた霧島くんがポツリと呟く。
「あーなんか、出しゃばってすみません。俺も十分部外者なんですけど……」
反省したように彼が言ったので、私は勢いよく隣を見て首を横に振った。
「ううん! 謝るのは私の方! なんか、今日は変なところばっかり見せちゃっててごめんね。私、なんか頭がぐちゃぐちゃで何も言い返せなくて……だから、霧島くんが助けてくれて嬉しかったよ」
「え……ほんとですか?」
「うん、ありがとう」
すると彼は、ほっとしたように表情を緩めて笑った。それはまるで褒められた子供のような顔で、私もつい目を細めてしまう。
後輩である彼に助けてもらってばっかりで申し訳ない。でも同時に、やっぱり嬉しかった。
「ていうか……やっぱり先輩の元カレクズじゃないですか。あれ、自分の都合のいいように友達に言いふらしてますよね?」
「みたいだね……大輔は、友達が多いタイプで……同期みんな私たちのこと知ってたから、別れたことは広まるだろうなとは思ってたんだけど」
「何がよかったんですか? 元カレの」
「えっと……まあ、明るくて飾らない感じとか? 私が作った料理とかいつも大げさなぐらい美味しいって言って」
「そんなの、俺だって絶対美味しいって食べますよ!!」
突然足を止めて彼が大きな声を出したので、ぎょっとしてしまう。いつになくどこか余裕がなさそうな霧島くんを、唖然と見つめた。
「ど、どうしたの、そんな大きな声出して……」
「だって、俺だって暗くはないと思うし、自分では飾ってないつもりだし、先輩が作ってくれた料理なら美味しく食べる自信あるし……」
「う、うん……?」
「……え、あれ、どうしたんだろう……」
彼自身も戸惑うような表情になり、私たちはお互い黙り込んだ。でも私はすぐ、彼をフォローするように笑顔になる。
「優しいんだね。私がぼろくそ言われてるの、一緒に怒ってくれたんでしょう」
「……まあ、それは、はい」
「ありがとう。霧島くんって結構熱い感じなんだね。目の前に困ってる人がいたら放っておけないタイプだ」
「……え、別に他の人なら……あ……いや……」
彼は再び困ったように黙る。私はとりあえず話題は終わらせて、お店に行こう……そう提案しようと思ったとき、ふと霧島くんの表情が変わった。
「あ」
「ん? ほら、寒いからお店に行こうよ」
「あれ、あー、そっか」
「なに?」
霧島くんは私の目線に合わせるように、少しだけこちらを覗き込む。そして、納得した、というように何度か頷いた。
「わかった」
「何が?」
「俺、璃子先輩が好きなのかも」
まさか、そんなぶっ飛んだセリフを出してくるなんて、夢にも思わなかった。