クズ男の本気愛
「そりゃ帰るよ……お邪魔してるんだし」
「お詫びっていうなら後日じゃなくて今日にしてください。俺、先輩が作ったご飯食べたいなー」
「ええっ」
「まだ帰るの禁止。あ、そうだ、シャワー使っていいですよ!」
「そんなの借りるわけにはいかないから!」
泊まってしまっただけではなく、その家のシャワーを借りるだなんて、さすがにこれ以上は無理だ。どれほど非常識か分かる。けれど霧島くんは決定事項とばかりに顔を輝かせているので、私は困り果てた。
「今更襲いませんって。一晩我慢したんだから、証明してるでしょ?」
「そういうことじゃなくて……」
「ほらいってらっしゃい。あ、よければ服貸しますよ。シャツとか乾燥機回しちゃってください。洗面所にあるものは全部使っていいですから」
彼はクローゼットから部屋着らしきものを取り出して私に渡し、背中を押して風呂場まで連れて行く。困り果てた私だが、ここで強く断るのもなんだか気が引けた。結局洗面所に入れられ、私は一人になってしまう。
「……どうしよう、上手く扱われている気がする……」
だがもうどうしようもない。確かにシャワーを浴びてさっぱりしたい気持ちはあったので、もうこのままお言葉に甘えることにしよう。私は意を決して着替えを置き服を脱ごうとしたところで、先ほど彼から渡された服が女性もののサイズであることに気が付いた。
ぴたりと停止してしまう。
「……これって……」
呆然としている私のすぐ横に洗面台があったのだが、そこにはブランド物のクレンジングや化粧水などが置かれていた。
……最悪だ。元カノの物だ……。
思えばあれほどモテてきた男なのだが、この家にもたくさんの女性が出入りしているのだろう。それを想像すると非常にむしゃくしゃした。でも頑なに何も使わないのも、意識しているみたいで恥ずかしいので、仕方なくお借りする。
別に私は付き合ってるわけじゃないからいいけど、一応告白までした相手に元カノの物を使わせるとか、あまりにデリカシーがなさすぎるんじゃないだろうか?
私はイライラしたまま、短時間でシャワーを済ませた。
リビングに行ってみると、比較的すっきりした部屋の中で霧島くんがテーブルを拭いていた。紺色のカーテンに紺色のソファとシンプルな感じだが、そのソファの上には少年漫画が置いてあったり、テレビの前にはゲームのコントローラーがあったりと、霧島くんらしい面も垣間見えて、少しドキッとしてしまう。
彼が私に気づき、顔を上げた。
「え、先輩早!」
「お、お借りしました」
「まだ片付け終わってないんですけど……早すぎますよ」
霧島くんは慌てたように言ったので、必死に片付けていたのか、と分かった。でも、埃や汚れはないので、恐らく普段から綺麗にしているのだろう。少し物が散らかっていた、ぐらいだと想像つく。
「別にいいのに」
「いやそういうわけには。てか、先輩髪濡れてるじゃないですか。ドライヤー分かりませんでした?」
「いや勝手に開けるのもなあ、って」
「先輩ならどこ開けてもいいんですよ!」
霧島くんはすぐに洗面所に行くと、ドライヤーを片手に戻ってくる。それをソファ近くのコンセントに繋げると、自分が腰かけてにこりと笑った。
「ほら、先輩座って」
「え!? いや自分でやるから!!」
「いいからいいから」
必死に拒否する私の手を強引に引き座らされると、彼はそのまま私の髪を乾かし始めた。こんな経験したことがないし、しかも付き合ってる相手でもないので、私の心はパニック寸前だ。小さくなるしかない。
霧島くんの手が優しく髪を触る感触が、妙にむず痒い。
「服、サイズぴったりでしたね」
彼が乾かしながらそう言ったので、私は先ほどの状況を思い出し一気に現実に引き戻された。真顔になり、淡々と彼に言う。
「そうだね。同じくらいの身長だったみたいだね」
「多分そうかなーって思ってました!」
「あのさ、家にいろいろ置いておくのは……」
「姉ちゃんも先輩ぐらいなんですよねー」
霧島くんの発言に開けていた口を閉じ、つい上を見て目を丸くしてしまう。
「姉ちゃん?」
「え? はい。それ、姉ちゃんのですよ。俺、二個上の姉がいて……姉は実家暮らしなんですけど、やれ仕事で遅くなっただとか、飲んでて終電逃したとかでよく泊まりに来るんですよ。それで、服とかいろいろ置いてってて」
「……じゃあ、あの化粧品とかも……?」
「え? はい」
きょとんとして霧島くんが言ったので、私は慌てて前を向いた。元カノの物じゃないとわかり、なんだかほっとしてしまったのだ。そしてそれを、彼に見られたくなかった。
そうか、お姉さんのものだったのか……。思えば、霧島くんは恋愛経験はクズだけれど、普段は気遣いが出来る子だし、私に元カノの物なんて貸すことはしないか。
「お詫びっていうなら後日じゃなくて今日にしてください。俺、先輩が作ったご飯食べたいなー」
「ええっ」
「まだ帰るの禁止。あ、そうだ、シャワー使っていいですよ!」
「そんなの借りるわけにはいかないから!」
泊まってしまっただけではなく、その家のシャワーを借りるだなんて、さすがにこれ以上は無理だ。どれほど非常識か分かる。けれど霧島くんは決定事項とばかりに顔を輝かせているので、私は困り果てた。
「今更襲いませんって。一晩我慢したんだから、証明してるでしょ?」
「そういうことじゃなくて……」
「ほらいってらっしゃい。あ、よければ服貸しますよ。シャツとか乾燥機回しちゃってください。洗面所にあるものは全部使っていいですから」
彼はクローゼットから部屋着らしきものを取り出して私に渡し、背中を押して風呂場まで連れて行く。困り果てた私だが、ここで強く断るのもなんだか気が引けた。結局洗面所に入れられ、私は一人になってしまう。
「……どうしよう、上手く扱われている気がする……」
だがもうどうしようもない。確かにシャワーを浴びてさっぱりしたい気持ちはあったので、もうこのままお言葉に甘えることにしよう。私は意を決して着替えを置き服を脱ごうとしたところで、先ほど彼から渡された服が女性もののサイズであることに気が付いた。
ぴたりと停止してしまう。
「……これって……」
呆然としている私のすぐ横に洗面台があったのだが、そこにはブランド物のクレンジングや化粧水などが置かれていた。
……最悪だ。元カノの物だ……。
思えばあれほどモテてきた男なのだが、この家にもたくさんの女性が出入りしているのだろう。それを想像すると非常にむしゃくしゃした。でも頑なに何も使わないのも、意識しているみたいで恥ずかしいので、仕方なくお借りする。
別に私は付き合ってるわけじゃないからいいけど、一応告白までした相手に元カノの物を使わせるとか、あまりにデリカシーがなさすぎるんじゃないだろうか?
私はイライラしたまま、短時間でシャワーを済ませた。
リビングに行ってみると、比較的すっきりした部屋の中で霧島くんがテーブルを拭いていた。紺色のカーテンに紺色のソファとシンプルな感じだが、そのソファの上には少年漫画が置いてあったり、テレビの前にはゲームのコントローラーがあったりと、霧島くんらしい面も垣間見えて、少しドキッとしてしまう。
彼が私に気づき、顔を上げた。
「え、先輩早!」
「お、お借りしました」
「まだ片付け終わってないんですけど……早すぎますよ」
霧島くんは慌てたように言ったので、必死に片付けていたのか、と分かった。でも、埃や汚れはないので、恐らく普段から綺麗にしているのだろう。少し物が散らかっていた、ぐらいだと想像つく。
「別にいいのに」
「いやそういうわけには。てか、先輩髪濡れてるじゃないですか。ドライヤー分かりませんでした?」
「いや勝手に開けるのもなあ、って」
「先輩ならどこ開けてもいいんですよ!」
霧島くんはすぐに洗面所に行くと、ドライヤーを片手に戻ってくる。それをソファ近くのコンセントに繋げると、自分が腰かけてにこりと笑った。
「ほら、先輩座って」
「え!? いや自分でやるから!!」
「いいからいいから」
必死に拒否する私の手を強引に引き座らされると、彼はそのまま私の髪を乾かし始めた。こんな経験したことがないし、しかも付き合ってる相手でもないので、私の心はパニック寸前だ。小さくなるしかない。
霧島くんの手が優しく髪を触る感触が、妙にむず痒い。
「服、サイズぴったりでしたね」
彼が乾かしながらそう言ったので、私は先ほどの状況を思い出し一気に現実に引き戻された。真顔になり、淡々と彼に言う。
「そうだね。同じくらいの身長だったみたいだね」
「多分そうかなーって思ってました!」
「あのさ、家にいろいろ置いておくのは……」
「姉ちゃんも先輩ぐらいなんですよねー」
霧島くんの発言に開けていた口を閉じ、つい上を見て目を丸くしてしまう。
「姉ちゃん?」
「え? はい。それ、姉ちゃんのですよ。俺、二個上の姉がいて……姉は実家暮らしなんですけど、やれ仕事で遅くなっただとか、飲んでて終電逃したとかでよく泊まりに来るんですよ。それで、服とかいろいろ置いてってて」
「……じゃあ、あの化粧品とかも……?」
「え? はい」
きょとんとして霧島くんが言ったので、私は慌てて前を向いた。元カノの物じゃないとわかり、なんだかほっとしてしまったのだ。そしてそれを、彼に見られたくなかった。
そうか、お姉さんのものだったのか……。思えば、霧島くんは恋愛経験はクズだけれど、普段は気遣いが出来る子だし、私に元カノの物なんて貸すことはしないか。