クズ男の本気愛
 すぐに顔を伏せたつもりだったけれど、彼は見抜いていたらしい。嬉しそうな声が頭上から落ちてくる。

「もしかして、元カノのものだとか思ってたんです?」

「……」

「この家に彼女入れたことないですよ」

「え!?」

 驚きでまた振り返って見上げると、霧島くんがはにかんで笑っている。

「その前に別れちゃうし」

 やっぱり最低か。長続きしませんもんね。

「あとしょっちゅう姉ちゃんが来てはチェックしてくし……あ、ブラコンとかじゃなくてですね? 『お前は昔から女をたぶらかしすぎてる! 家に上げるなら結婚を考える女性だけにしろ!』っていつも殴られてて」

「お姉さんはしっかりした人なんだね」

「きびしい!」

 笑いながら彼はまた私の髪を触り始める。あまりに優しい指先で、心地よさを覚えるほどだ。

「あとすぐ別れるかもしれないのに自宅を教えるのって抵抗があって……ほら、何かの仕返しに来られても怖いじゃないですか?」

「分からなくもないけど、付き合ってるのに自宅を教えてもらえない彼女って……」

「三ヵ月続いたら呼ぼう、って思ってました!」

 やけにどや顔で言っているけれど、どうしてそんな顔が出来るんだ。そりゃビンタされるし水ぶっかけられるって。家にも上がらせてもらえないんじゃ、遊ばれたって思うよ普通。

「でも先輩が妬いてくれたなんて、感激だな」

「べ、別にそんなんじゃない!」

「またまたー。脈ありかなあ俺ー!」

 やけに嬉しそうに言うのではあとため息をつく。このポジティブマイペースにひっばられている気がする、気をつけなくては。

「先輩のすっぴんって初めて見ました」

「……見ないで」

「めっちゃ可愛いですよ! ちょっと幼くなる?」

「うるさい」

「職場でも俺しか見てないのかなー優越感ー」

「敦美は見てる」

「女性はいいんですよ!」

 くだらない会話をしていると髪が無事に渇き、ドライヤーが止まる。すっぴん部屋着でシャワー上がり、完全にカップルみたいな図だけれどこれでいいんだろうか。

 霧島くんはコンセントを抜きながら言う。
< 23 / 59 >

この作品をシェア

pagetop