クズ男の本気愛
「それで? 金曜のことは?」
「にゅ、入力ミスは本当に見つけたんです! あれは嘘じゃないです! でもそのあと増田さんが仕事の期限について責めてたのを見て、『増田さんが言ってたのを聞いた』と噓は言ってしまいました……す、すみません、ちょっと困ったらいいなって思ってたんです!」
「このブス! べらべら嘘言うな!」
薫さんが叫んだのを見て、周りがドン引きの顔になっていく。もはやホラーを見ているかのような反応だ。
「やっぱり高城さんが浮気とか嫌がらせとかありえないって……優しくて面倒見いい人だもん」
「じゃあの写真も二人で共謀して仕組んだってこと? ヤバすぎでしょ……」
「怖すぎ。増田さんもあんな人だったとか……サバサバしていい人だと思ってたのに」
周りの声が聞こえても、薫さんと大輔は何も反論できない。霧島くんは薫さんから乱暴に手を離し、今度は大輔の目の前に立つ。
「あとさ。さんざん先輩と別れてないって言ってたけど、ラインの文章見てみ。かなり前に先輩はあんたに『私たちはもう別れたので連絡しないでください』って送ってんだよ。別れたって言われた元カノに無理やりキスするのは犯罪なんだよ」
そう。この土日、霧島くんに言われて大輔とのメッセージを見返していると、私はかなり前に大輔にそんなメッセージを送っていた。
まだ霧島くんとも付き合う前で、私が酔いつぶれて霧島くんの家に泊まったあの日。大輔から鬱陶しいラインが来ていたので、私はきっぱり送っていた。これで、私はかなり前に別れの意思を彼に伝えていた証拠となる。
大輔は額に汗を浮かべて何も答えない。だが、薫さんは諦めが悪いようでさらに叫んだ。
「そこの女が嘘の証言をしたってだけで、私は嫌がらせなんかしてない! 書類抜いたとかそれこそ嘘言ってるだけ!」
「諦めが悪いなあ……」
「地味でとりえもない、なんでそんな女の味方をするの? 私の方がずっと優れてるのに!」
薫さんの言葉を聞いて霧島くんがピクリと反応する。ゆっくり薫さんの方を見て、静かな口調で答える。
「何言ってんの? 先輩は優しくて思いやりがあって料理上手で面倒見よくて、最高の人だろうが。めっちゃ可愛いし綺麗だし、あんたなんて比べ物にならないんだけど」
「……は」
「俺は今まで褒められた恋愛歴じゃないから、先輩みたいな人が付き合ってくれるの凄く感謝してるんだよ。最高に幸せなんだよ。それをぶち壊したお前たちを許すわけないだろ。しかも先輩が浮気? この人がそんな事するわけないだろ。一ミリも疑わなかったわ。そんなことする人じゃないんだよ」
目を怒りでギラギラにさせた霧島くんは、次の瞬間こう続けた。
「それに先輩の全身には俺がつけまくった跡が大量なんだよ! あれ見て萎えない男なんているわけないだろ! 浮気なんかできるわけないだろ!!」
しん……と沈黙が流れる。
……そこ? 霧島くん、そこなの……?
確かに彼は、これでもかと言わんばかりに印をつけるけど……消えそうになるたびに上書きしてくるけど……! それをなぜ今言うんだ!!
全員が固まっていると、彼はすぐに気が付いたように片手で口を覆った。
「やべ……余計なこと言っちゃった……ついヒートアップして……あ、先輩! 別にあれがなくても俺は全く疑いませんからね! 絶対に先輩を信じてますから!」
「……霧島くん……フォローするとこ違う……」
私は顔を真っ赤にして両手で覆った。あまりに恥ずかしすぎるではないか。一体なぜこんな爆弾発言に至ってしまったんだ。
だがなぜか、この彼の失言は周りの人たちの心をくすぐったらしい。みんな小さく笑い、温かな目で私たちを見てくる。
「ほんと仲いいんだね二人。霧島くん、なんかイメージ変わったかも。高城さんには敵わないって感じ」
「本気って感じするよね。今までとは明らかに違う感じ」
「あの霧島が落ち着くところが高城さんって、俺は納得だけどなあ」
周りが何だか祝福モードになってきて、私は嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちになった。お似合いって言われたのは嬉しいけど、さっきの発言はやっぱり穴があったら入りたい。
霧島くんは一旦咳ばらいをし、話を元に戻す。
「と言うわけで……誰が悪いかはこれで分かったと思います。宇野大輔はフラれて復縁も断られた腹いせの嫌がらせ。増田薫も先輩に嫉妬して嫌がらせ」
「嫉妬……? わ、私が? こんな女に!?」
薫さんが震える指で私を指してくる。それを霧島くんがすぐに払った。
「そういうことでしょ。先輩が宇野大輔と付き合ってた頃から邪魔しようとしてたみたいだし、あんた宇野大輔に相手にされなかったのが悔しかったんでしょ? その後は何だか俺にもちょっかい掛けてきたけど、そこでも相手にされなくて憤慨、ってとこ?」
「え、薫……お前俺が好きだったの?」
大輔が驚いた顔で薫さんを見る。薫さんはカッとなって叫んだ。
「そんなわけないじゃない! 大輔が結婚したがってるから、そんな地味女じゃなくて私がしてあげてもいいなって思ってただけ! でも霧島くんの方が条件ずっといいから、そっちの方が私に似合ってるって……」
「はあ? 俺より条件がいいってなんだよその言い方」
「当然でしょ! 年下でかっこよくて営業部エースなら、超優良物件じゃない。だからあんたとその女の復縁を応援してやったのに!」
「お前さあ……男友達みたいで気軽だからつるんでたけど、女としては性格悪すぎだろ! 選ばれるわけないだろ!」
大輔に性格のことを言われるなんて、世も末だ。
「はああ!? 私はずっとこれまでモテてきたんですけど! 本気になれば結婚相手ぐらいすぐに探せるのよ! あんたのバカみたいな計画に乗らなきゃよかった……」
「俺は写真撮って霧島に見せるだけを考えてたのに、SNSに勝手にばらまいたのお前だろ!」
「よくやったって喜んでたじゃん!」
ついにひどい仲間割れを始めてしまった。周りは冷めた目でそんな二人を見つめている。
「にゅ、入力ミスは本当に見つけたんです! あれは嘘じゃないです! でもそのあと増田さんが仕事の期限について責めてたのを見て、『増田さんが言ってたのを聞いた』と噓は言ってしまいました……す、すみません、ちょっと困ったらいいなって思ってたんです!」
「このブス! べらべら嘘言うな!」
薫さんが叫んだのを見て、周りがドン引きの顔になっていく。もはやホラーを見ているかのような反応だ。
「やっぱり高城さんが浮気とか嫌がらせとかありえないって……優しくて面倒見いい人だもん」
「じゃあの写真も二人で共謀して仕組んだってこと? ヤバすぎでしょ……」
「怖すぎ。増田さんもあんな人だったとか……サバサバしていい人だと思ってたのに」
周りの声が聞こえても、薫さんと大輔は何も反論できない。霧島くんは薫さんから乱暴に手を離し、今度は大輔の目の前に立つ。
「あとさ。さんざん先輩と別れてないって言ってたけど、ラインの文章見てみ。かなり前に先輩はあんたに『私たちはもう別れたので連絡しないでください』って送ってんだよ。別れたって言われた元カノに無理やりキスするのは犯罪なんだよ」
そう。この土日、霧島くんに言われて大輔とのメッセージを見返していると、私はかなり前に大輔にそんなメッセージを送っていた。
まだ霧島くんとも付き合う前で、私が酔いつぶれて霧島くんの家に泊まったあの日。大輔から鬱陶しいラインが来ていたので、私はきっぱり送っていた。これで、私はかなり前に別れの意思を彼に伝えていた証拠となる。
大輔は額に汗を浮かべて何も答えない。だが、薫さんは諦めが悪いようでさらに叫んだ。
「そこの女が嘘の証言をしたってだけで、私は嫌がらせなんかしてない! 書類抜いたとかそれこそ嘘言ってるだけ!」
「諦めが悪いなあ……」
「地味でとりえもない、なんでそんな女の味方をするの? 私の方がずっと優れてるのに!」
薫さんの言葉を聞いて霧島くんがピクリと反応する。ゆっくり薫さんの方を見て、静かな口調で答える。
「何言ってんの? 先輩は優しくて思いやりがあって料理上手で面倒見よくて、最高の人だろうが。めっちゃ可愛いし綺麗だし、あんたなんて比べ物にならないんだけど」
「……は」
「俺は今まで褒められた恋愛歴じゃないから、先輩みたいな人が付き合ってくれるの凄く感謝してるんだよ。最高に幸せなんだよ。それをぶち壊したお前たちを許すわけないだろ。しかも先輩が浮気? この人がそんな事するわけないだろ。一ミリも疑わなかったわ。そんなことする人じゃないんだよ」
目を怒りでギラギラにさせた霧島くんは、次の瞬間こう続けた。
「それに先輩の全身には俺がつけまくった跡が大量なんだよ! あれ見て萎えない男なんているわけないだろ! 浮気なんかできるわけないだろ!!」
しん……と沈黙が流れる。
……そこ? 霧島くん、そこなの……?
確かに彼は、これでもかと言わんばかりに印をつけるけど……消えそうになるたびに上書きしてくるけど……! それをなぜ今言うんだ!!
全員が固まっていると、彼はすぐに気が付いたように片手で口を覆った。
「やべ……余計なこと言っちゃった……ついヒートアップして……あ、先輩! 別にあれがなくても俺は全く疑いませんからね! 絶対に先輩を信じてますから!」
「……霧島くん……フォローするとこ違う……」
私は顔を真っ赤にして両手で覆った。あまりに恥ずかしすぎるではないか。一体なぜこんな爆弾発言に至ってしまったんだ。
だがなぜか、この彼の失言は周りの人たちの心をくすぐったらしい。みんな小さく笑い、温かな目で私たちを見てくる。
「ほんと仲いいんだね二人。霧島くん、なんかイメージ変わったかも。高城さんには敵わないって感じ」
「本気って感じするよね。今までとは明らかに違う感じ」
「あの霧島が落ち着くところが高城さんって、俺は納得だけどなあ」
周りが何だか祝福モードになってきて、私は嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちになった。お似合いって言われたのは嬉しいけど、さっきの発言はやっぱり穴があったら入りたい。
霧島くんは一旦咳ばらいをし、話を元に戻す。
「と言うわけで……誰が悪いかはこれで分かったと思います。宇野大輔はフラれて復縁も断られた腹いせの嫌がらせ。増田薫も先輩に嫉妬して嫌がらせ」
「嫉妬……? わ、私が? こんな女に!?」
薫さんが震える指で私を指してくる。それを霧島くんがすぐに払った。
「そういうことでしょ。先輩が宇野大輔と付き合ってた頃から邪魔しようとしてたみたいだし、あんた宇野大輔に相手にされなかったのが悔しかったんでしょ? その後は何だか俺にもちょっかい掛けてきたけど、そこでも相手にされなくて憤慨、ってとこ?」
「え、薫……お前俺が好きだったの?」
大輔が驚いた顔で薫さんを見る。薫さんはカッとなって叫んだ。
「そんなわけないじゃない! 大輔が結婚したがってるから、そんな地味女じゃなくて私がしてあげてもいいなって思ってただけ! でも霧島くんの方が条件ずっといいから、そっちの方が私に似合ってるって……」
「はあ? 俺より条件がいいってなんだよその言い方」
「当然でしょ! 年下でかっこよくて営業部エースなら、超優良物件じゃない。だからあんたとその女の復縁を応援してやったのに!」
「お前さあ……男友達みたいで気軽だからつるんでたけど、女としては性格悪すぎだろ! 選ばれるわけないだろ!」
大輔に性格のことを言われるなんて、世も末だ。
「はああ!? 私はずっとこれまでモテてきたんですけど! 本気になれば結婚相手ぐらいすぐに探せるのよ! あんたのバカみたいな計画に乗らなきゃよかった……」
「俺は写真撮って霧島に見せるだけを考えてたのに、SNSに勝手にばらまいたのお前だろ!」
「よくやったって喜んでたじゃん!」
ついにひどい仲間割れを始めてしまった。周りは冷めた目でそんな二人を見つめている。