クズ男の本気愛
 たった二か月、されど二か月。これだけ頻繁に会って泊まったりもしているのに、先に勧めないのはもどかしい。

「……え」

「ま、待つって言ってくれたのは嬉しかったけど、もう十分誠意は伝わってる。別に待たなくても、って私は思っちゃって……」

 恥ずかしさを抑えながらなんとか言ってちらりと蒼汰を見てみれば、彼は停止画のように座ったまま動かないでいた。何か反応してほしい、こっちは勇気を振り絞って言ったんだから。

 そのまま少し沈黙が流れた後、現実に引き戻されたというようハッとした彼が、慌てた様子で言う。

「ちょ、待ってくださいね、予想外すぎて全然頭がついて行けてなくて……あの、今日のことを感謝したくてとかそういうことなら別に気にしないでいいんです。確かに我慢は辛い時もあるけど、先輩に無理させるのは違うと思うし」

「無理してない! 私が! 我慢できないの!」

 つい勢いで言い返してしまうと彼の目が一瞬見開かれた。けれど次の瞬間、無言のまま勢いよく私を引き寄せて深いキスをした。

 これまでとは全く違う、なんだか余裕がないキスだった。まるで食べるように角度を変えつつ何度もキスを繰り返した彼は、そのまま私の服の中に手を滑らせていく。

 一瞬離れて見えた彼の顔は、見たこともないぐらい苦しそうだった。

「先輩にそこまで言わせちゃった。ダメですね、俺」

「……先輩じゃないでしょ」

「はは、璃子だった。ベッドいこ」

「あ、ちょっと待って、せめて先にシャワーを……」

「そんな待て出来ると思う? 俺が?」

 そう笑った蒼汰は私を一度強く抱きしめて、ひたすらがむしゃらなキスを重ねた。



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