ぜんぶ、ちょうだい。



「ひまちゃんさぁ、私、今日という日が来なければよかったって思ってる」

「はいはい、またそれ!朝からずーっと泉先輩の話してるじゃん!」

「してないってば!ちょっと考えちゃうだけで……!」



声が少し大きくなって、慌てて口を押さえる。
だって仕方ないじゃん。

中庭にはテントがずらーっと並んでて、焼き鳥のいい匂い、焼きそばのソースの香りが混ざって、空気までおいしそう。

特設ステージからは音楽が流れて、ダンス大会が始まってる。
歓声が上がって、拍手が響いて。こんなにも私以外の人が楽しそうに青春してるというのに。



「こまちゃん、先輩に完璧に振られたんでしょ? 次行こう、次っ!」



ひまちゃんは、ほんとに悪気なく言う。
分かってる。分かってるんだけど。


――そんなに簡単に行けるかー!!


声には出さず、心の中で全力ツッコミ。
次ってなんだ、次って。
ガチャガチャみたいに恋できたら、苦労しないんですけど。


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