ぜんぶ、ちょうだい。



でも、ふっと冷静になる。

……うん。
元々、そういうつもりだったよね。
振られる前提で、覚悟して告白したんだ。

期待してなかった、はず。
なのに、胸の奥はまだチクチクしてる。



「はぁ……」



小さくため息をついた、そのとき。



「もっと楽しそうにしろよ」



聞き覚えのある声。
振り向かなくても、誰だか分かる。

軍手をつけた清水が、クーラーボックスを開けて、中をがさごそ漁っていた。
在庫確認に来たらしい。



「……清水に言われたくないんだけど?」



反射的に言葉が出る。
語尾は強め。自分でも分かるくらい、トゲ付き。

あの日から。
私たちは、絶交中。

前みたいに、軽口を叩いて笑うことも、何でもない顔で並ぶことも、もう、できなくなってしまった。


沈黙。
やけに長く感じる沈黙。

空気が重くて、息がしづらい。



「……こまちゃん、とりあえず行きましょうか?」



ひまちゃんが、気まずそうに笑いながら割って入る。
優しいな、ほんと。

でも、その優しさに甘える間もなく。



「え、ちょっ――」



腕を、ぐいっと引っ張られた。
問答無用。完全に連行。


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