ぜんぶ、ちょうだい。



「こまちゃん、よくないよ~、あの態度」



ひまちゃんはそう言いながらも、通りすがりの人にはちゃんと笑顔で、「焼き鳥どうですか~!出来たてですよ~!」なんて器用に声をかけている。


……でもさ、ひまちゃん。

だって、今さらどうしたらいいのか、分かんないんだもん。

あれだって。
未だに、胸の奥でモヤモヤしてるし。

それに、それにさ――。



「……泉先輩に振られてさ、私、凄い傷ついたんだよ」



声が、少しだけ小さくなる。



「それを……清水にやると思うと……」



最後まで言えなかった。
言葉にしたら、もっと自分が嫌なやつになる気がして。

ひまちゃんは、私の横でふぅっとため息をついた。



「こまちゃんさ、自分のこと聖女だとでも思ってるの?」

「……はい?」



急すぎて、思わず素っ頓狂な声が出る。



「恋愛なんてさ、傷つくの当たり前でしょ!」



ひまちゃんの声は、いつもよりちょっとだけ強い。


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