ぜんぶ、ちょうだい。



「みんなそういう覚悟持って、人を好きになってるんだよ。みんなを幸せにしたいとか、誰も傷つけたくないとか――」



ぐさっと、言葉が刺さる。



「そんな傲慢なこと考えてるんだったら、改めなさいっ!」

「そ、そこまで言ってないんだけど!?」



慌てて反論するけど、全然迫力が足りない。


ひまちゃんはプンスカと頬を膨らませて、完全に怒ってる。
こんなひまちゃん、正直かなりレアだ。



「それにさ、こまちゃんは清水のこと舐めてる!」



ひまちゃんの声が、ぴしっと空気を切った。



「あんなに器の大きい男、そうそういないって言ってんじゃんっ!」

「……うっ」



図星。
反論できなくて、言葉が喉に詰まる。

ひまちゃんは看板を私に押し付けて、すぐ近くにあったチョコバナナの屋台へ向かった。



「ちょ、ちょっと……?」



戻ってきたひまちゃんの手には、チョコバナナが2本。



「えーっと……? 食べるの?」

「違う違う」



ぐいっと2本、私に押し付けられる。



「これ持って、清水のとこ行ってきて!」

「……え?」

「あいつ、チョコとか好きでしょ?それにさ――」



ひまちゃんは腰に手を当てて、睨む。



「うじうじしてるこまちゃんなんて、大っ嫌いなんだから!」



……ひどい。
でも、優しい。


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